第24話 あのクソロリコンが!
「そもそもですね、前提がおかしくてですね。本題の前に、なんで僕の顔がこんなに割れてるんですか。さっきの沙那さん?なんてまだあったことも無いのに」
「んー……でさ、あんた」
おい、聞けよ。人の話は聞く気なくても、聞く振りぐらいはしてあげなさいって学校で習わなかったのかよ。もしかして俺の声はノイズか。ノイズキャンセリングか?
「なんで彼女を放ったらかしにしたわけ?」
「別に放ったらかしにした訳じゃないですよ。ちょっと喧嘩してしまっただけで。まあ主に僕のプライドがしゃしゃり出たというか、悪目立ったというか」
それよりか、何故俺は他所様に喧嘩話を打ち明けているのだろうか?
普通カップル間の問題というのは赤の他人混じえて、裁判みたく解決するものだっただろうか?
それとも、他所のカップル事情に首突っ込むというのは最近のトレンドとでも言うのか?今まで常識だと思って生きてきたその常識はとっくに消滅したとでも言うのか。
最近のカップルは、そこら辺で突っ立てる人間に「ちょっときーてくんなーい?この前さー彼氏とガッチャンコしちゃってぇー……あぁ、悪い意味でねー」と相談がてら慰めてもらったりするのだろうか。
あと、大事なことなので言っておくが、俺たちはカップルではない!
「まあ、あんたにもあんたの言い分があるのかなんなのか知んないけど、あの子にもあの子なりの言い分がちゃんとあるんだから。言ってたよ。もっと一緒に楽しみたかったから直してあげようと思っただけなのに」
そうか……なごみ。だとしたら、悪いことをして……
「あのクソロリコンが!って」
悪いことしてない!!!絶対俺悪くないっ!!!あいつぅぅぅぅ!!!!
すると店の入口の方から沙那さんが着物の皺を伸ばしながら話しかけてきた。
「でも、あの子ちょっと変わってるでしょ」
変わっているといえば変わっているが、どうしてこの短期間で気付けたのだろうか。やはり女性同士だとそういう事まで分かったりするものなのだろうか。
「小柄だし」
あ、物理的な方でしたか。
「それより彼女さんはいいの?」
「あー、あいつのことなんで探さなくても近くにいると思いますけど」
「キミはなんでそうも」
「え?」
すると店の扉がガタンと音を立てた。
時間帯的にお客さんは来ないはず。だとしたら強風でも吹いたのだろうか。しかし、結構な物音がした割には、扉に注目したのは俺だけだった。
扉を凝視していると扉の奥に一人の少女が走り抜けていくシルエットが見えた。
「あの、お客さんじゃないですか?」
「こんな時間帯にお客さんは来ないよ。まあ、誰かいたみたいだけど」
はぁ。とため息混じりに言う沙那さんの顔を見て考え込む。俺に何かを訴えかけようとしているのか?次いでおばちゃんまでため息をつきはじめた。
「え、何ですか二人して」
冷たい視線を浴びせられながら、その威圧の訳を理解できないでいた俺は愛想笑いをしながら答えた。
「君は今日誰と来たの?考えたら分からないかな普通」
冷たい態度でそう吐き捨てる沙那さんを見てやっと気が付いた。
「ちょっと行ってきます。お邪魔しました!」
そうとだけ残しレンタル屋を出ると、俺は先程のシルエットを真っ先に追った。
「なごみ!待って、逃げるな!」
すると段々と減速してやがて止まる。何も考えずに飛び出した俺は、捕まえることだけを考えていた為だけに何を言おか全く考えていなかった。
それにしても暫く追いかける羽目になるかと思っていたが、意外と素直に止まってくれて助かった。
「お、おう。やけに聞き分けがいいな、どした」
「逃げるなって言ったのはそっちですよ」
やはり怒り口調は抜けていなかった。
「お、怒ってるか……?」
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