第13話 バカげた話

「俺とか!?」

「ダメならいいんですよ。ただ、今まで男の人と少しも縁が無くて、恋をするしない以前の話だったので」

「じゃあ、デートは初めて……?」

「もちろんです」

「初めてのデートが俺でいいなら別にいいんだけど……、もう一度聞くぞ。よーく考えて答えるんだぞ。俺でいいん――」

「――ありがとうございます!」


 もう恋とかどうでもいいから話を聞くことを覚えようか!

 デートをした事がないとすれば、もしかしたら可能性はあるかもしれない。いや、これは可能性しかないだろ!診断を下した医者がやぶ医者だったという可能性は十分にある。正直言って恋ができないだなんてそんなバカげた話があるわけがないと思っている。


「私、できる気がするんです。もし、もしの話です。私が先輩に恋をしてしまったら、その時は受け入れてくれますか……?」


 あのー、妙に恋に対して積極的なのは良いんですが、攻め方の方はもう少し消極的になられたほうがよろしいかと。今までに見たことの無いくらいグイグイと攻めてくる。

 それはさておいて、返答に関しては適当なことを言わないと決めていた。その理由はなごみの顔を見れば書いてある。相手が本心で向き合ってきたのなら同じくらい本心で向き合ってあげることが、後に優しさに繋がると知ったから。


「それは……無理かな。仮になごみに好かれたならそれはすごく贅沢な話なのかもしれないけど、俺になごみは勿体ないだろ」

「そうですか、分かりました。それだけ聞ければ十分です!取り敢えずそこのカフェにでも入って早速デートプランを立てましょ!」


 なごみはスッとベンチから腰を上げるとカフェの方向を指しながら言う。次いで俺が立ち上がろうとすると


「先輩は立たなくていいですよ」

「え?なんで。俺の事嫌いになったの?」

「いや、ロリコンがばれて捕まるかもし――」

「――よいしょっと」

「あぁー!」


 俺の腰を上げさせないためになごみが一生懸命服を下に引っ張るが、そんな貧弱な力で俺を止められる訳もなく、少し可哀想だったが容赦なく立ってやった。だって……


「ねぇ、なごみちゃん?」


 なごみの考えていたことは多分こんな感じだ。「こんな大きいのと一緒に歩いてたら絶対子供と勘違いされちゃうー!そんなのイヤだぁー!」みたいな。ありそー。勝手な憶測だけど。最初にロリコンとか言ってきたのはそっちだからな!

 売られた喧嘩はできる限り買いたくはないが、なごみがその気なら売ってなくても買ってやる。可哀想とかどうでもいい。彼女の場合買えるだけ買って買い占めてやるぐらいの精神でぶつかっていかなければ気付かぬうちにその固く鋭くなった言葉の棘で俺がやられてしまう。

 だから俺は敢えて中腰になり、彼女の目線に合わせて少し嫌みっぽくいじってやった。


「なごみちゃんはちっちゃくてカワイイなぁー」

「はぁ?」


 俺が仕掛けてからこの反応に至るまでは案外早かった。眉間に皺を寄せながらウザいというよりかは何をほざいとんだコイツは、さては正気じゃないな?と彼女の不安そうで心配そうな表情がそう物語っていた。

 えぇー。なんかホントごめん。割とガチな方の「はぁ?」を頂きました。


 これに似た行為を物欲しそうにしてる女子にやったことがあるが、意外とウケが良い。

(Q、彼はキザじゃない。とても誠実な男であると聞いたのですが嘘ですか?A、もちろん!)

(Q、どうせモテないんでしょ?A、……ッチ、あーイライラしてきた。SAN値SAN値ー。やべ、切らしてんじゃん。……あ?こっちみてんじゃねぇーよ)


 あの……、どうも一舞です。現在、私の株が暴落の危機にあると嗅ぎつけまして弁解しに参りました。

 ちなみに物欲しそうにしている子にいじわるするというのも、顔を真っ赤にする女子がかわいいからついやってしまうだけであって……。あれ、これをキザって言うのか?とにかく女子に対してやましい気持ちとか邪な気持ちはもったことがない。もってたらほら、ドーテーなわけないし……。


「そんな反応されたら俺ただの恥ずかしいやつになっちゃうからやめて」

「はぁ……」

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