h24.08.04. 幻肢痛


 夕陽を遮る坂に建つ 鏡に森の映る家

 壁に木漏れ日は浮かび 光陰は音を立て風と溶け合う


 白くやわらかな脚を這う赤黒い甲殻類 伏せていた指を揃え

 誰に会えなくたっていい 夜の背を見送って


 あれだけ願った灰色の空 雨が降って水底へと満たす

 濁った世界で御影石を踏み 無数の深海魚と擦れ違う


 両手を並べた間違い探し

 何も言い聞かせられてはいないんだ

 あの弦を渡っていく音も、何ひとつ


 それでも僕は、その歌が聴こえる場所にいた。



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