h24.07.07. ひらら



 今日は随分と古い雨が降る。


 世界の全てが本であるなら、全ての人々は栞でしかない。

 ただ、そうありたくもなかっただけ。


 取り返しのつかない事はしたくない。それで取り返しがつかなくなったんだ。


 多弁な雨粒に囲まれて、僕らは何も言えなかった。

 問いかける記憶は、時間がやけに調えてしまった。


 「どうして」 そう笑ってはいなかった。

 長い衣を揺らし、摘んだ花を落としゆく君。


 蝶を追うように心許こころもとなくて、羽をぐ思いでその髪を切った。


 今日は随分と古い 雨が降るから。



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