h24.05.25. カーテシー


 そこにひれ伏していた。

「寄らないで。」

 声が聞こえ、転がって仰向けに。

「訊き返さないで。」

 様変わりした視界の中、こちらを見下ろす一人の少女に気付く。

「子宮の音を聴いて。」

 その足元で倒れたまま、見上げ続ける。

「ねえ?」

 黙っていると、少女は手にしていた赤黒の花を僕の顔へ無造作に落とした。

 眼前で散り、顔中に感触が広がる。

 咄嗟に閉じた目を片方だけ、薄く開く。

 頬や瞼に点在する冷たさと、それを与える花弁越しに少女を見上げる。

 何かを言おうにも、口は塞がれていた。

「花言葉?」

 首を振る。

 彼女の暗い瞳は渦巻いて見え、僕は呼吸を止めてその裾を首を

「少し嘘。」掴む。


 互いが凌いだその場の意味は

 打ち消す言語の品無き香りよ

 繰り返す迂回で眩んだまなこ

 ゴミみたいな命を生きるしか無かった僕の身にもなれよ

 「言葉せがまれての空嘔吐なんて沢山なんだ。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る