h22.07.02. めであい


 半夏の雨を 掬い乾さんと 烏柄杓


「もう思い出せないのだと君が言う。仕方なかったと君が言う。いい過去だったと君が言う。永遠なんて無かったと君が言う。」


 石の上を脈々と走る根。傷のない痛みが這い寄るように。


「あの時はどちらかというと胸の苦しさに泣いた」

「よく言えたよね」

「レミファソの指で」

「……こう?」

「笑わないよ」

「笑わないの?」


 いつでもそこにある安らぎを静かに忘れ、

 いつもどちらかが置き去りにされるように

 優しく確かに、季節は移ろう。


「人は魚。」

「路は川。」

「階段は滝。」

「橋は潮。」

「風は波。」

「街は海。」

「ビルは岩礁。」

「泡沫の雲。」

「流れていくヒトデ。」

「満ち欠けるクラゲ。」

「舟。」


 笑みが止まった。そして、オミナエシのひらく音に聴いた。



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