第114話、報復の記録・『 私は、地獄を見た ③ 』
この話は、戦時中では無く、『 終戦後 』に自決した、南樺太・真岡郵便局の女性電話交換手たちの話だ。 これも史実であり、事実の話しである事を、前もって伝えておく。
1945年8月16日…… 戦争状態は、既に終結したにも関わらず、事もあろうか、ソ連( 旧 ソビエト連邦国:現ロシア )軍は、当時、日本の領土だった南樺太に向けて進軍を開始した。 まさに『 駆け込み参戦 』だ。
「 ドサクサに紛れて、やっちまえ。 今なら、日本の領土を奪える…! 俺たちは、大国のソ連だ。 理由は後で、何とでも言える 」
おそらく、そんな感覚だったんだろう。 日本の北方師団が武装解除を始めた矢先だから、状況を知った上での、意図的な進軍だ。 卑劣極まりない……!
……まあ、昔からソ連ってのは、陰険だからね。 今に始まった事じゃない。 多分、アメリカとも秘密裏の合意があったんじゃないのか? 普通だったら、「 おいおい、何、勝手な事してんだよ? 」って、止めるのが筋だからね。
南樺太の電話交換手だった数人の女性職員たちは、武装解除後も通信業務を遂行する為に、内地には帰らず、郵便局内に残留をしていたんだ。 ……事態を重く見た上司は、ソ連兵から彼女たちの純潔を守る為、全員に青酸カリを渡した。
ソ連兵ってのは…… 何だろうね、とにかく占領した土地で、女性に乱暴をするんだ。 言い方が悪いが、国民性ってのかな? 満州からの引き上げでも、侵攻して来たソ連兵に、数多くの女性たちが奪われている。 無理やり連れて行かれた彼女たちは、二度と帰って来る事はなかった……
この事実は、命辛々、引き上げて来た人々が証言している。 もっとも、『 戦勝国 』からの報復を恐れ、数十年間、口を閉ざしていた人々が大半だったけどね。
恐怖が、事実を隠蔽させていたのさ。
1945年8月20日 南樺太発 最終電文。( 電文と共に、通話がなされた )
以下、原文のまま。
『 内地の皆さん、稚内電話局のお友だちに申し上げます。
只今、ソ連軍が、わが真岡電話局に侵入いたしました。
これが、樺太から日本に送る、最後の通話となるでありましょう。
私たち9人は最後まで、この交換台を守りました。
そして間もなく、9人そろってあの世に旅立ちます。
ソ連軍が近づいております。足音が近づいております。
稚内の皆さん、さようなら、これが最後です。
内地の皆さん、さようなら、さようなら…… 』
〔 自決殉職者 氏名一覧 〕
高石 ミキ(24)、
志賀 晴代(22)、 渡辺 照(17)、高城 淑子(19)、
松橋 みどり(17)、伊藤 千枝(22)、沢田 キミ(18)
女性局員全員、20歳前後の若い女性たちばかりだ。
自決した彼女たちの胸の内は、
当時、南樺太には民間人も含め、40万人ほどの日本人がいた。
緊急疎開が始まり、多くの船舶が救援に駆け付けたが、ソ連軍は、その疎開船にも攻撃をした。 残虐非道な行為は、現在、ウクライナでも繰り広げられているようだが、この頃からも、ソ連ってのは変わっていないんだね…… 占領地で、女性を手籠めにする行為も同じだ。
結局、緊急疎開船が3隻、ソ連軍に攻撃され、約1700名の日本人が、海の藻屑となった。 陸上でも、ソ連軍による市街地などへの無差別攻撃が行われ、約2000人の民間人が死亡している。
あと、当時、日本が統治していた満州へも、ソ連軍は侵攻を開始し、逃げ遅れた民間人たちは皆、殺されている。
殺害された人は、数千人。 ほとんどが、女性と子供で、女性たちの多くは強姦された後、納屋に押し込められて放火され、焼き殺されている。
8月27日に起こった
……大国が聞いて呆れる。
こんな史実を棚に上げて、どの口が現在の世情を語ってんだ、と問いたい。 僕は、ソ連を軽蔑する。 こんな、欲望の塊… 隠蔽の条件に合致すれば、本能の赴くままに行動する国は、発展途上の未開国以下に相当すると思わないか?
殺害に加わった者には、韓国人・中国人たちの存在もあった。
彼らは、死亡・もしくは、瀕死の日本人たちの衣服を剥ぎ、金品を強奪し、生き残っていた子供たちを拉致し、人身売買している。 ここまで来ると、一種の『 ジェノサイド 』だ。
日本側の、占領国民に対する差別視点が以前からあったが、それに対する『 恨み 』も、中国側には加味されていたのだろう。 …しかし、報復に値する暴挙は、それを遥かに凌ぐ見地であると僕は思う。 殺戮された人々の数が、桁外れだ。 一般人・兵士を合わせ、8万人以上が殺されているんだよ? 某国が、何かにつけて糾弾する『 南京大虐殺 』における、日本軍が『 虐殺 』したと言い張る途方もない数とは違い、この数字には、れっきとした事実の裏付け・資料が残されている。 史実なんだ。
ちなみに、この『 南京大虐殺 』の被害者数などは、実にいい加減な数字で、数百人~数千人の幅がある。 中には「 30万人だ 」などと言う『 見識者 』もいて、聞いて呆れる。 大都市の人口にも匹敵する数の人間が殺されているのに、その資料・証人はおろか、墓すら無いだなんて… おかしいじゃないか。 どう考えたって、有り得ない。 明らかに、でっち上げている証拠だ。 レベルの低い話さ。
……まあ、中には、良心的な中国の方々もいた。 その人たちによって戦後、何十年と育てられてきたのが『 中国残留孤児 』たちだ。
70年代初頭、田中内閣によって中国との国交正常化が実現され、戦後30年以上経って残留孤児たちは、やっと帰国する事が出来た。
この元凶となった『 加害者 』のソ連( ロシア )だが、Webサイトには生存者の証言も併せ、克明に掲載されている現状にも拘らず、何の弁解も陳謝も無い。 勝手に領土とした北方領土も、未だ返還も無い。
……これは、今、問題となっているクリミア半島併合が、似たような経緯だね。
2008年にジョージア( グルジア )に侵攻した時と同じく、自分たちの勝手な正義を正当化し、他を襲うロシアは、いつか自国に弊害をもたらす事になるだろう……
分かったかい?
我が国の終戦・戦後ってのはね、祖国の為に戦った英霊と、悲しみ・苦しみを胸に、黙々と働き続けて殺された人たち… 名も亡き、罪も無い人たちの、尊い犠牲の上に成り立っているんだよ。 『 戦犯 』なんてのにされちまった方のご遺族は、それに加えて、『 戦争犯罪人 』なんて言う汚名にも耐えなきゃならなかった……
もちろん、戦争加害者としての、償うべき部分はあると思う。
だが、その後に勃発した戦争は、いくつもある。 これも、学校で歴史を勉強している君らの方が、僕よりも詳しい事だろう。
だが……
大戦後に勃発した戦争の『 責任問題 』について、議論・討論された事実はあるかい?
停戦合意し、終戦となり… その後は?
本来なら、国際軍事裁判が開かれて当然だろう? ナニも、無いじゃないか。
おかしいとは、思わないかい?
……78年前だ。
戦勝国による、明らかに一方的に不平等な軍事裁判だったが、開かれたのは78年前。 その後は、無い。
勝者が復讐の念にとらわれて、敗者にどんな償いを求めたのか。 そして、我々の同胞らが、どんな想いで、その不本意な運命に従ったのか……
その後の史実、見てごらん? そこまでの事をされた国なんて、無いよ。 冤罪を受け入れてまで、相手の報復感情の犠牲に殉じた国家は、国としては、日本が最後だ。 サンフランシスコ講和条約は、人身御供に差し出された1061人の命と引き換えに調印されたようなものなんだ。
この事実を、少しでもいいから認知してくれよ。
生まれた時から日本が豊かで、大した不自由も無く、育ってきたやつら……
そこまでは言わなくても、生き・死にに、直面したような事が無いやつら……
どうして、したり顔で「 日本は、戦争の反省が済んでない 」とか、「 戦争責任を果たしてない 」とか、言えるんだ? お前らは、戦時下を過ごしていないだろうが?
「 先の戦争を肯定するな、加害の事実に目を向けろ 」だって?
てめえだけが、いい子ぶりっ子の偽善者も、たいがいにしろっての!
それとも、お前が、戦争犯罪の子孫として責を負い、今から『 戦犯の子 』にでもなって、首吊りますか?
先の章でも言わせてもらったが、戦争犯罪なんてものは、どの国だって犯している。 表面化していないだけさ。 ほとんどの場合、敗戦した国がその所業を暴露され、罪として償いを受けている。
いいかい? この、今の日本があって、我々が豊かに暮らせていられるのは、『 七生報国 』と、胸に唱えながら軍部の連中に煽られ、護国の鬼となって戦って倒れて、靖国さんにいらっしゃる英霊たちと… 日本の責任とやらを、その一身に背負って『 処刑された方 』たちのお陰なんだ……!
彼らが、殉じてくれたからこそ、その他の国民たちは、戦後を生き永らえる事が出来たんだ。 その経緯を、よく見極めてくれよ……!
いいんだよ…… もう、彼らは、充分にお国のために戦ってくれたんだよ。 なんで、いつまでも、いつまでも、くだらん事で騒ぐのか。
てめえの理屈だけで、英霊の安らかな眠りを妨げるなよ。
もう、そっとしといてやっておくれよ、頼むから……!
……すまん、つい感情的になってしまったようだ。
平和な現代に住む、君らのような若人たちには、理解しろと言っても少々、無理があるだろうね。 何せ、1世紀近くの時が経とうとしているんだ。 それは、僕も理解出来るよ。 先の意見に関する発言は、少々の訂正をさせてくれ……
だが、靖国神社とは、そう言う存在の物だって事は、覚えておいて欲しい。
最後に、簡単ではあるが、史実的に靖国神社を紹介しよう。
慶応4年以降、戊辰戦争・明治維新期の戦没者を慰霊、顕彰する動きが活発となり、そのための施設である招魂社創立の声が、各地で起き始めた。
それらを背景に、靖国神社は、明治天皇の勅令によって明治2年に建てられた招魂社に起源を発し、国家のために殉難した人の霊246万6千余柱を祀っている神社なんだ。
その、国家に由緒ある神社を参拝して、何が悪い……!
確かに、A級戦犯の名前も記してはある。 だが、合祀してあるだけだ。 合祀とは、遺骨の埋葬法の1つで、一緒に埋葬してあるだけで、その所業を祀っている訳ではない。
経緯をよく理解しろ、下衆共が……! 勝手に、他国の歴史を軽視・干渉するな! 一部の軍関係者の暴走に煽られ、翻弄されつつも、護国の為にと… 信じながら死んで逝った同胞たちを祀っている神社を参拝して、何が悪いってんだッ……!
どうやら、僕の講釈は、ここまでにした方が良いようだ。
戦中を経験した者には、どうしても拭えない心の
……だが、史実は事実だ。
歴史を歪曲し、都合の良い正義を振りかざして民衆を扇動する某国らは、無責任の極地と言わざるを得ない。 それは、日本の愚かなる過去と同じく、一部の指導者らが引率する独裁政治へと発展する危険性がある……! 国民を煽り、民衆を翻弄させる軍事政権へと、自ら繋げてしまう行為と成り得る事だろう。
某国らが騒ぐ『 軍国主義への傾倒 』なんざ、戦争を経験して来た者から言わせてもらえりゃ、ふざけんな! ってコトだ。 誰もが、皆、「 戦争は、イカン! 」って言ってるだろ? 二度と、自ら戦争に傾倒していく事など無い。 あんな経験は、もうコリゴリだ。
だから、戦争で命を落とした者たちへの追悼の心を、頼むから理解してやってくれ。 戦没者に対する黙祷を拒否するなんて…… そんな、薄情な国民には、なって欲しくは無い。 頼むよ……!
願わくば、過去を正しく理解・認識し、良識ある平和な時代が、末永く謳歌出来る事を祈念する。 それが、死んで逝った同胞たちへの、最善の手向けになる事だろう……
遥かなる、未来を生きる者たちへ。
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