第92話、『 遺産 』

 先日、2年前に亡くなったお袋と、昨年の11月に亡くなった親父の部屋( 40年前に、増築して出来た部屋 )を、綺麗さっぱりと整理した。 ついでに、キッチンを筆頭に、各部屋・廊下などに鎮座していた40年来の『 放置物 』も、遺品・遺作を含め、一切を整理。

 ガランとした情景となった実家の各部屋を目に、一抹の寂しさは感じたが、これから住む為のリフォームへ向けて、その心意気は、新となった。


 さて、古い貨幣の話題が連続となるが、悪しからず……

 整理中、親父の部屋にあった年代物の机の引き出しの中から、出るわ出るわ。 仕舞い込んだまま、忘れ去られた紙幣・小銭などが、およそ数十万円分発見された。

 『 ヤな予感 』が的中し、業者に任せるのではなく、自分で最終整理をしてホント良かった……!


 現在、流通している貨幣に混じり、懐かしいどころか記憶にすら無い古い貨幣・小銭もあり、第60話に登場した板垣退助の100円札も、数枚が出て来た。

 特に、写真でしか見た事の無い『 10円紙幣 』にはビックリ。

 この10円札… 数種類の絵柄が存在し、マニア・コレクターの間では、結構、人気のある紙幣の為、『 それなり 』の価値があるのでは? と思ったのだが… 実は、そんなに価値は無いのだそうだ……

 今回、出て来たのは1946年から発行された、国会議事堂が描かれている10円札紙幣。 これより古い10円紙幣には、和気清麻呂わけのきよまろの肖像が描かれている。( ちなみに、和気清麻呂は、奈良時代末期から平安時代初期にかけての貴族。 楠木正成などと並ぶ、勤皇の忠臣と見なされ、明治から大正にかけての当時は『 有名人 』だった ) 期待に及ばず、それほど価値が無いと言う理由は、数多くの枚数が残っているからだそうだ。

 ……だが、調べてみると、驚くべき事実が判明した。


 この国会議事堂が描かれた10円紙幣は、何と、現在でも10円として使える10円紙幣なのである……!


 これには、驚いた。

 だが、さすがにコンビニで使ってみようと言う気にはならない。( 前回の第91話、参照 ) 物事、何事も『 ほどほどに 』である。(笑)

 他にも聖徳太子( 現在の表記は、厩戸皇子うまやどのみこ )の1万円・5千円札、岩倉具視の500円札、伊藤博文の千円札が新札で出て来た。 稲穂100円硬貨や、東京オリンピック記念硬貨なども……


 仕舞い込んだまま、忘れる… と言うのも、親父が金に関して無関心な性格だったからだろう。 公務員として定年まで働き、給料・賞与は、全て給料袋ごと、お袋に手渡しだった。 退職後は、年金で悠々自適……

 外食先で、親父が支払いをしている姿を見た事が無いが、つまるところ、自分で支払う事が無かった為、金に対する執着が無いのだ。

 時々あったであろう『 臨時収入 』や、溜まった小遣い、町内会・市役所からの『 高齢お祝い金 』などは、中身( 金額 )も確認せずに机の中へ…… 必要とされない『 資金 』は、そのまま忘れ去られ……


 つくづく、金に関して、困る事の無い人生だったのだと、改めて思った。( 羨ましい )


 決して、裕福だった訳ではない。

 普通に生活をし、たまには買い物もしていた。 整理・処分しなくてはならない『 放置物 』の存在が、それを証明している。

 必要以上に、モノを欲さなかった、と言う事なのだろう。



 親父の『 遺産 』を手に、そんな事を想った。



*近況ノートに、画像をUPしておきますね。

 聖徳太子の1万円・5千円は、使うのに少々、勇気が要るかと……

 頑張って『 換金 』して参ります。(笑)

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