第83話、『 盛者必衰の理をあらはす 』

 第80話にあった結びの記述と同じく、またしても平家物語の冒頭の引用ではあるが、内容的には、そんなに深い話ではない。


 ……いつの世にも流行と廃りがあり、それは数年ほどの期間を経て、常に繰り返される。 何故、誰しもが単一的に倣い、やがて廃れていくのか……?


 ある意味、精神論にも波及しようかと言う、そのメカニズムを解き明かした者は、未だいない。

 流行を追い掛ける者は、常に社会に向けてアンテナを張っていなければならず、それは、時に煩わしさを伴う。 真の盛者とは、古から存在する『 基本 』なのではないだろうか。 シンプル・イズ・ザ・ベストだ。


 ……ナニをブッちゃけているのかと言えば、最近、見なくなった『 アレ 』を、久し振りに見掛けたからである。

 その、アレとは……?


『 ルーズソックス 』


 ……出た。

 古典文学を引き出した割には、お粗末な内容。 「 ソコかよ! 」ってカンジだが、ホントに、見なくなって久しかった。 当時、道を歩いている中学生・高校生を無作為に選び出すと、10人中、7割以上は履いていたルーズソックス… 通称、『 ルーソー 』。

 今回、久し振りに見たのは、繁華街だ。

 多分、何かのイベントで『 仮装 』していたのかもしれない。 ご丁寧に『 ガングロ 』&『 上目じり、白 』。 当時、シャネルやプラダ、ディオールのペーパーバッグを肩に、バーバリー系のチェック柄マフラーを首に巻き、街を闊歩していた連中や、学校指定のカーディガンを腰に巻き、脱色した髪をボサボサにしていた『 ヤマンバ 』スタイルの連中を思い出した……(笑)

 『 原宿系 』など、最近、一部のティーンの間では、ルーソーの復活が見受けられるらしい。 ただ、90年代当時のモノとは、若干の違いがあるようだ。

 すれ違う通行人の内、ハイティーン世代の者たちは『 コンセプト 』が理解出来ないのか、無視。 中年から壮年層の年代の人たちは、皆、振り向いていた。


 『 ルーソー 』に取って代わったのは、通称『 コンハイ 』… 紺色のハイソックスである。

 このコンハイ、実は、何十年も前から存在していたもの。 この辺り、『 基本 』が盛者と言ったところか。

 『 基本 』を通すなら、ルーソーの場合、靴はローファーだ。

 ハルタ辺りの、少々、値段が高いメーカーをチョイスするのが『 イケてる 』らしいのだが、当時、ピカピカの新品ローファーはNG。 何と、ワザとコンクリートやアスファルトに擦り付け、ボロボロ感を演出するのが『 通 』だったとか。 ティーンの『 新感覚 』は、今も昔も理解に苦しむ……

 まあ、私の若い頃の『 感覚 』も、当時の大人たちから見れば、随分と異色に映った事だろう。

 長髪にサングラス、鼻ヒゲを生やし、地面に当たるようなベルボトムのジーンズに、幅広の皮ベルト&特大バックル……

 宇宙人を見るような大人たちの視線が、結構に心地良かったものである。(笑)



 一時、隆盛を極めたアイテムには『 ポケベル 』なるモノもあった。

 リーマンから学生まで、その利用者は相当たる数だったのだが、衰退は、驚くほど早かった。 あっという間に倒産し、消えた。

 まあ、銀行がツブれる時代である。 ナニが起こってもおかしくはない。

 ……とすれば、流行を追いかければ追いかけるほど、自身の負担は多くなると言う事である。 それを負担と感じない者は、『 新しいモノ 』を英知の対象として追いかけて行けば良い。 それこそ、個人の自由だ。


 私としては『 温故知新 』を信条としている。 お金が掛からないから……( 笑 )

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る