第73話、『 サントリー・ローヤル 』

 ウイスキー特集…… ジャパン・ウイスキーからも1本紹介しよう。

 昭和40年代頃、羽振りの良かった叔父さん宅の応接間の棚に、シーバス・リーガルや、I・Wハーパー、カティサークなどと言った海外モノに混じり、必ずあった『 ローヤル 』。 スリムボトルの商品も市場には登場しているが、ローヤルは、やはり『 角瓶 』だ。

 デカくて邪魔だし、注ぎ難いし、重いし…… いいトコ無しの角瓶だが、重厚で豪華にして、余りある存在感……! 飲んで内容量が少なくなり、空洞部分が多くなった時、コルク栓を抜く際の音が、何とも心地良く響くのである。(笑)


 少々、記憶が定かではないが、歴史を紹介しよう。

 サントリー・ローヤルは、サントリーの前身である鳥井商店( ことぶき屋:葡萄酒 酒造業 )からかぞえて、創業60周年を記念し、1960年に誕生。 壽屋の創業者であり、初代マスターブレンダーでもある鳥井信治郎氏が、長年にわたるウイスキーづくりの過程で、自身が培った香り・味・色の『 黄金比 』を体現化した逸品だ。 漢字の『 酒 』のつくりの部分にあたる『 酉 』 の形をボトルに模り、栓を神社の鳥居に見立て、渾身の自信作として、世に送り出された。


 現在、サントリーには『 山崎 』など、シングルモルト・ウイスキーもあるが、当時、日本のウイスキーは、ブレンデットが主流だった。 そんな中、モルトバランス・風味・香り、全てにおいて完璧と言わしめたローヤル。

 日本を代表する逸品となった。


 何と言っても、ボトルデザインが良い……!

 この角瓶のデザインに勝るボトルは、おそらく無いのではないだろうか。

 近況ノートに、画像をUPしておいたので、ご覧頂こうか。


 以前は、コルクの付いたボトルネックと本体には、封印紙のようなリボンが付いていた。 それを、ペーパーナイフなどで封切りをする。 この瞬間が、たまらなかったのである。 『 高い酒 』を飲む、と言う優越感に浸れたのだ。

 ボトルのラベルは、何度となくデザイン変更されているが、初期のローヤルには『 ‘60 』の文字が印刷されている。 現在は『 SR 』だ。


 20歳の頃、初任給で買ったのは『 サントリー・オールド 』。 翌月の給料では、この『 ローヤル 』を買った。 オトナになったと言う実感が、湧いて来たものである。(笑) 未だ、実家の自室の棚には、この時に買ったローヤルの角瓶が残されている。( ‘60のラベル付き )


 昔のボトルデザインで好きだったのは、このローヤルの他に、最近はあまり見かけなくなった『 ロバート・ブラウン 』がある。 旧キリン・シーグラムが提供していたブレンデット・ウイスキーで、ボトルのデザインは海外のデザイナー作品との事だ。 日本を旅行した時に見かけた『 釣鐘 』をモチーフにしたらしい。 どっしりしたデザインで、非常に存在感があった。 当時としては珍しく、透明なガラス製のボトルだった。


 今は、あまり見掛けなくなったロバート・ブラウンだが、角瓶のローヤルは、店舗でよく見掛ける。 是非、手にして頂き、味わってもらいたい1本である。



 次回、お手頃価格のスコッチ・ウイスキーを紹介しよう。

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