第53話、"I'm Not in Love"
タイトルは、古い洋楽の曲名なのだが、果たしてご存じだろうか?
20歳の頃、よく聴いていたアメリカン・ミュージック……
『 スーパー・トランプ 』と言うバンドは、おそらく壮年層で洋楽好きの方には、おなじみだと思う。 アルバム『 ブレックファースト・イン・アメリカ 』の大ヒットで一躍有名となった、イギリス出身のロックバンドだ。
同じ時代・同じイギリスのバンドで『 10cc 』と言うバンドがあった。 タイトルは彼らの楽曲である。
日本では、日産スカイラインR34のTVCMで、BGMとして使われていた。
幻想的で、不思議な印象のこの曲は、何時となく私の脳裏を、ふと過ぎる。 何のタイミングも無しに……
当時、よく聴いていた『 ELO 』・『 エイジア 』・『 ホール&オーツ 』等のアルバム楽曲と混同し、ずっと、どのバンドの曲なのか分からなかった。 実際、この曲は、あらゆるメジャーなバンド・ミュージシャンたちにカバーされており、オリジナルを勘違いしている方も多い。 とある音楽番組の特集で紹介されていて、私が、この曲の『 正体 』を知ったのは40歳を越えてからだった。
当時は、まだシンセサイザーが無かった時代……
この楽曲のサウンドは、通称『 ピンポン録音 』と言う、いわゆる多重録音の技術を駆使して創られている。 更には、テープ速度の変化によって、音程・音色を変えていた。
とても、そんなアナログな技法で作られているとは思えない、完成度の高さ。 音響の、奥行きさ……! 今でも、完璧だと思う。 この響きが、40年も前に造られていたなんて、とても信じられない。
今風に例えれば、非常にスピリチュアルなサウンドを持った楽曲だと思う。 何かが… 敢えて言うなれば、『 時 』をも従えた『 何か 』が、造り出されたサウンドの中に存在しているのだ…… そう… とてつもなく大きな『 何か 』が、終わった『 時 』を懐古しているような……
じっと聴いていると、そんな哲学的抒情詩を読んでいるかの如く、混沌とした中にも、心は、非常に落ち着いた感覚に囚われるのだ……
実は、このバンド『 10cc 』は、1972年のデビュー以来、メンバーの入れ替わり・活動の休止・解散・復活… と、紆余曲折の経緯を辿りつつも、何と、現在もバンドとして音楽活動をしている。 ビーチボーイズ並みの、ご長寿バンドである。
かくして、時代に合わせた "I'm Not in Love" が、今日も世界のどこかで奏でられていくのだ……
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