第43話、八重山諸島 旅行記『 与那国島 』編③

 比川を出てしばらく西へ行くと、再び、海沿いの道となる。

 与那国島の南岸沿いの道は、雄大な東シナ海を臨む広々とした所だ。 黒潮が打ち寄せる岸は、少々荒々しく、大海に近い所なのだと、妙に納得をさせる雰囲気がある。


 自衛隊の駐屯基地があるが、施設や民家がある近くの道には15㎝くらいの溝が連続して設置してある所がある。 『 テキサス・ゲート 』と呼ばれるもので、馬や牛の蹄( ひずめ )がはまり込み、歩けないようにする為のものだ。 放牧している馬や牛などが、施設や民家に近付かないようにする為に設置してある。


 やがて、与那国島の西端に到着。

 『 日本最西端の碑 』があり、小高い丘にある展望台からは、大気が澄んでいる冬など、遠くに台湾を見る事が出来る。


 ここは日本の最西端……

 これ以上、西は日本国ではない。 『 外国 』なのだ。

 遂に、ここまで、妻と娘を連れて来る事が出来た。 感無量だ……!


 しばし、遥かに霞む紺碧の水平線を眺めていた。


 日本最西端の港である与那国港を左手に、空港方面へと車を進める。 ぐるっと、与那国島を時計回りに回った事になる。

 やがて、悲しい歴史のある久部良地区へ。

 『 久部良バリ 』と呼ばれる大岩の割れ目があり、わずか120年ほど前まで、ここで殺人が行われていたのだ。 犠牲者の多くは、身重の妊婦・老人・病人・子供 etc…


 1637年から1903年まで、260年以上も沖縄の人々を苦しめた重税に、『 人頭税:にんとうぜい 』と言う税金制度があった。 1609年、薩摩藩が沖縄を侵略して琉球王府を支配し、圧力を掛けた結果、琉球王府は宮古・八重山の島々に重税を課すようになった。 それが人頭税である。

 家計が苦しくなり、『 人減らし 』の為に、ここで公然と殺人が行われたのだ。

 3~4mもあろうかという岩の割れ目を、飛び越させられ、多くの者が岩下へと落下、命を絶たれた……


 美しい自然がある与那国島だが、歴史は、必ずしも正比例するとは限らない。

 紺碧の海を前に、不気味な深い割れ目が、大きく口を開けていた。 傍らには、石仏……

 美しい海を見る為に訪れた人々は、この『 久部良バリ 』には、ほとんど興味を示さず、訪れる人は少ないのだそうだ。 私たちが立ち寄った際にも、誰も人影は無かった。


 久部良を後にし、少し北に行った所にある『 ダンヌ浜 』へ行ってみた。

 小さな入り江となった綺麗なビーチだ。 浜には、色とりどりの貝殻が打ち上げられ、引き潮によって岩礁の間に取り残された『 池 』には、小さな魚たちが泳いでいた。

 泳ぐよりは、波打ち際を歩き、貝殻を拾うと楽しそうだ。 持って来た小さな瓶に、貝殻、数個を拾い集めた。

 浜の入口には、コンクリート製の建物がある。 トイレとシャワー室なのだが、海に面した入口が丸形をしている。 なぜ、そんな奇抜な造形なのかは不明だが、浜から見上げると、青い空をバックに、中々にインスタ映えである。(笑)


 さて、与那国島を一周し、空港まで戻って来た。

 レンタカーは空港の敷地に、キーを指したまま放置。 …何とも、無警戒な話しだが、これが『 正式なレンタカー返却ルール 』らしい。

 出発は、18:50発 RAC746便。 まだ、1時間半ほど時間がある。

 早々に、空港の建物内に入ってみたが、誰もいない。 それどころか、売店は全てシャッターが下り、搭乗カウンターにも誰もおらず、空港エントランス・廊下なども、数個の電灯が点いているだけで薄暗い。 …休みか? まさか、そんなハズは無いだろう。

 不安な心を押さえ、レストランの方へ歩いて行くと、一軒だけ営業している土産店があった。 そこで『 YONAGUNI 』と名前の入ったキーホルダーを購入した。 店員の話だと、飛行機は一日数便しか無いので、飛行機が到着した時だけ照明を点けるのだそうだ。 何とも、ローカルな話だ…… (笑)


 日本国最後の夕日をバックに、新石垣島空港へ。

 ホテルに着いたのは、夜8:00頃だった。

 美しい海の絶景を堪能した1日…… おそらく、娘の記憶にも、奇跡の様な美しい海の風景が残る事だろう。 連れて来る事が出来て、ホント良かった……!


 ( 近況ノートに掲載した画像は、ダンヌ浜にある『 トイレ 』。

   外観を、海側から撮影したものです )


 → 続く

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