第42話、八重山諸島 旅行記『 与那国島 』編②
与那国空港から、北の海岸線を東に行くと『 6畳ビーチ 』と言う絶景の場所がある。 ソコは、後にして…… 今回、その少し前にある、知る人ぞ知る『 4畳半ビーチ 』へ向かった。 その名の通り、間口10mにも満たない小さな浜である。 …何と、集団墓地の中を進む為、少々、心配になったが、しばらくしたら海岸へと出た。
ビーチの入口は『 隣国 』から流れ着く漂着ゴミ( ハングル文字や、広東語表記の生活ゴミ )で景観は損なわれるが、波打ち際に立つと、その美しさに心を奪われる。 限りなく透明な波が静かに足元へ打ち寄せ、まるで別世界だ……!
「 ……なんて綺麗なの……! 」
持参したビーチサンダルに履き替え、緩やかに打ち寄せる波に足先を濡らしながら、思わず、妻が呟いた。
水温も高いので、おそらく、泳ぐ事も可能だろう。 しかし、今回の旅に『 海水浴 』の予定は入っていない。 あくまで、美しい海を観る事にある。 一度も海を見たことの無い娘にしてみれば、泳ぐ事など選択肢には入っていないのだろう。 打ち寄せる、透明な波に足を付け、目を点のようにして、洗われる自分の足元を見入っている。
妻に向かって言った。
「 お母さん、見て見て~! 飲めるような透明な水だよ~? 」
沖縄~八重山諸島の浜は、砂ではなく、珊瑚の小さな欠片がほとんどを占める。 従って、波打ち際で、細かい砂の粒子が水中で巻き上げられ、海水が濁る事は無い。 特に、この与那国島の浜の透明度は、驚くほど高い。
……まあ、次回は、泳ぐのも良いかもしれない。 それまでは、スイミングスクールを頑張ってもらおうか。(笑)
『 4畳半ビーチ 』の次は、『 6畳ビーチ 』へ。
地図検索すると場所は表示されるのだが、低い樹木が茂る海岸線が延々と続いている所である。 案内看板も、何も無い。 確か、手書きの小さな看板は、あったはずなのだが……
ふと、左側の樹木の中に、看板らしきものが目に映った。 行き過ぎた車をバックさせて確認すると、朽ちかけた木の板( 20㎝×80㎝くらいの小さな板 )に、黒のマジックで書いた看板があった。
『 ← 6畳ビーチ 』
……子供が書いたような、ヘタクソな字だ。 しかも、釘が片方だけ外れ、傾いている。誰がどう見ても、イタズラとしか思えない。
妻が、呟くように言った。
「 ……ビックリカメラじゃないの? 」
僕も、最初に来た時は、そう思ったわ……
生い茂る木々が踏み固められ、獣道の様な入口がある。
車を、路肩に止めて降り、獣道のような所を、木々を手で分け入りながら進む。
「 ホントに、ここ… 大丈夫なの? 」
心配顔の娘に、私は言った。
「 波の音が、聞こえて来ただろう? もう少し行くと… 」
突然、木々を抜けて視界が開け、断崖絶壁の上に出た……!
「 凄いっ…! メッチャ、綺麗~っ……! 」
思わず、娘が叫んだ。
眼下、数十メートル下には、エメラルドグリーンの海が広がり、まさに、ミニチュアのような… 真っ白な、小さな浜が見える。 どこまでも続く紺碧の水平線と、雲一つないコバルトブルーの空。 そう、コレを、2人に見せたかったのだ……!
「 どうだあぁ~っ…! 」
海に向かって両手を広げ、私は叫んだ。
頬に掛かる髪を、右手で押さえながら、妻が言った。
「 どうしても連れて行きたいって、言ってた気持ちが、すっごい分かるわ…! 」
しばらく、絶壁上にある思い思いの岩に座り、途切れる事無く聞こえる潮騒を耳に、見た事も無い美しい海原を眺める。 海に向かって、日傘の付いたフィールド・チェアーに座り、ハイボール片手に、のんびりと単行本小説でも読めたら最高だろう……!
その後、海岸線を更に車で東に向かい、東崎( あがりさき )灯台へと向かう。
「 あっ、馬だ! 馬が、たくさんいるよ~! 」
また、娘が声を上げた。
サラブレットのように、スラリとした体型ではないが、大人しそうな性格の馬たちが、あちこちで草を食んでいる。 与那国の天然記念物に指定されている『 与那国馬 』で、この辺りに放牧飼育されているのだ。
そこいらじゅうに糞が落ちているが、合成肥料ではなく、草しか食べないので全然、匂わない。
遥か、岬の灯台まで短い牧草が生え、牧草のグリーンと海の紺色・空の青色が、見事なコントラストを見せていた。 『 絵に描いたような 』とは、こんな景色を指すのだろう……
メルヘンのような景色を堪能し、草を食む馬たちの横を歩きつつ、岬の先に立つ灯台へと向かう。
小振りだが、紺碧の海と蒼い大空を背に立つ、真っ白な東崎灯台……
まさに、インスタ映えする景色だ。
娘が、灯台を見上げながら言った。
「 灯台、初めて見たぁ~……! 」
今回の旅は、初めて尽くしだな。(笑)
海岸線を南に走り、今度は西へ向かう。
『 軍艦岩 』・『 神岩 』などと言った奇岩があり、中々に楽しませてくれる。
やがて昼頃、南の村、比川に着いた。
比川浜は、2003年のTVドラマ『 Dr.コトー診療所 』のロケ地になったことで有名なビーチで、海岸脇には撮影に使われた診療所がある。 セットではなく、本物の診療所で、現在も開業中だ。
入場料が要るらしいので、建物を写真に収めるのみにした……
比川浜の近くにある食堂『 楓食堂 』にて昼食。
思いっきり、ローカル色の雰囲気が豊かな食堂で、ホントに営業しているのか? と疑うほどである。 少々、入口を開けるのに躊躇した。
店内は、簡易テーブルにパイプイス4人掛けと、8人くらいが座れる座敷があった。 奥の厨房で、女将さんが1人で調理をしているようだ。 郵便局員の制服を着た男性が、沖縄蕎麦の定食を食べている。 地元の方が通う店は、味が良い。 安心して注文したが、注意点が1つだけある。
与那国では、食事のボリュームがハンパ無い。 もし、定食を頼む際は、食べ切れなかった事を想定して注文して欲しい……
( 近況ノートに、4畳半ビーチの波打ち際に立つ、娘の写真を掲載致しました。
当時、9歳 )
→ 続く
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