第11話、とある、コンビニにて

 自宅近くのコンビニで、買い物をした。

 よく買い物に行く店だが、見慣れない大柄な体型の男性が、のっそりとレジに立っている。

 多分、歳は20代の前半。 短めの茶髪を逆立て、半袖のワークウェアの下に、くたびれた黒の長袖トレーナーを着込み、穴だらけのジーンズを穿いていた。

 新しく入った、バイトだろう。


 緑茶のペットボトル1本を持ってレジに行き、精算をする。

 覇気の無い、ゆっくりした暗い声で、彼は言った。

「 …98円っス… 」

 ナンちゅう、暗い声だ。

 ボソっとした声で、対応するな。 今、アンタが働いている業界は、サービス業だぞ? ヤル気の無い声は、客の購買意欲までも奪うわ。

 100円硬貨をサイフから出すと、彼は、更に、暗い声でボソボソと言った。

「 あ… どう… します? 」

 ……は? ナニが、どうするってか?

 私が、きょとんとしていると、彼はボソボソ続けた。

「 えと… このままで… イイっすか……? 」

 どうやら、レジ袋に入れなくても良いか? との問いらしい。

 私は答えた。

「 ああ、いいですよ 」

 おっと…! うっかり100円硬貨を、床に落としてしまった。

 すると、彼は言った。

「 …あ… マジ、大丈夫すか……? 」

 私は、硬貨を拾いながら答えた。

「 ああ、マジ、大丈夫っすよ? 」


 …つられて答えてしまった。

 それにしても、シャキっとせんか、若人!

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