14
バレンタイン当日も、生憎の雪空だった。
日中、チョコだの手紙だの告白だの、浮き足だったセリフばかりが頭の上を行き交うのを、凌はつまらなさそうに傍観していた。義理チョコでも貰えば嬉しいのだろうが、人を寄せ付けないオーラを放っているせいか、女子から声がかからない。
唯一怜依奈だけが、「はい、義理チョコ」と、コンビニのお買い上げシールが貼られたままのアポロチョコをラッピングもせずに渡してきた。自分に続けて哲弥にも同じ物を渡していることを確認すると、二人離れた席で指を差し合って笑い転げた。
美桜は休みだった。
「美桜のヤツ、体調悪いのか?」
怜依奈に聞いても、わからないと首を横に振られる。
「お見舞い、行ってあげたら? 芳野さんが居なければ向こうにも飛べないし。今日の活動はお休みで」
「お、おう。そうだな。そうする」
凌は困ったような顔をして、後頭部を何度か掻いた。
「い、一緒に、行くか? 見舞い」
「どうして。一人で行けば良いじゃない。家も知ってるんだし」
「ま、まぁ。そうなんだけど。芝山と……行くか」
「芝山君は今日、塾で大切な講義があるって」
「そ、そうか。じゃ、仕方ないな。見舞いはまた今度――」
その一言に、怜依奈はギロリと目を見開いた。
「いや、今日のうちに行かなきゃな。あいつ、さみしがり屋だし」
「そうそう。ちゃんとお見舞いに何か持っていくの忘れないでね。果物とか、スイーツとか」
「はいはい」
売り言葉に買い言葉、成り行きで見舞いに一人で行くことになってしまったとは。
「参ったな……」
凌はため息を吐いて、髪の毛を掻きむしった。
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