6

 哲弥からの連絡に、怜依奈は戸惑った。

 普段は「スマホは電話でしかない」と、SNSでの会話を極端に嫌う男が、珍しい行動だった。哲弥が言うには、スマホの操作時間は、勉強時間にマイナスに働くらしく、効率を悪くする道具でしかないとのこと。今時稀少な、全く融通の効かない人間なのだ。


≪あの二人、どうにかしてやりたいんだ。協力してくれる?≫


 あの二人とは、凌と美桜のことだ。

 元々凌に片想いしていた怜依奈にとって、それはあまり受け入れられないお願いだった。

 制服のままベッドに寝転がり、文面を何度も見直す。

 美桜もそうだが、凌の表情も近頃硬い。悩み事があるのだというのはすぐにわかった。けれど、「大丈夫」とにこやかに返されては何も言い出せない。悶々とした日々を過ごしていたのは怜依奈も同じ。


「凌が悲しい顔をしてるの、これ以上我慢できないもんね」


 自分に言い聞かせるよう呟いて、怜依奈は静かに深く息を吐いた。

 美桜に、SNSでメッセージを送る。


≪今度の休み、一緒にチョコ作らない?≫


 自分でも変だと思う。

 好きな人の彼女とチョコを作ろうだなんて。

 それでも。

 怜依奈は複雑な気持ちで、美桜からの返信を待った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る