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 情けないヤツだと、哲弥は思った。

 やりたい放題命の危険も顧みずにひた走ってきた男が、一人の女の気持ちを傷つけているかもしれないということでウジウジしている。それが来澄凌という男の優しさなのだろうし、魅力でもあるのかもしれないのだが。

 面倒だ。

 学年末が迫り、本当は勉強でそれどころではない。

 進路決定までの大切な期間だというのに、いつまでも裏の世界に入り浸っていて良いのかと自問自答する日々の中、裏の世界で神様をやっている凌に頭を下げられたのだ。本当に大切なのは何かと試されているような気がして、哲弥の心は穏やかではなかった。

 かといって、凌に助け船を出せる人間が他にいないことも、哲弥は知っていた。友達が居ないというのは大げさじゃない。凌は本当にびっくりするほど、人付き合いが苦手なのだ。

 ひと肌脱ぐしかないのだろうか。

 凌の自宅からの帰り道、哲弥は渋々スマホを取り出す。


≪須川さん、ちょっと相談あるんだけど≫


 慣れないフリック入力でたどたどしく打つと、哲弥はハァと白い息を吐いた。

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