第13話 kawasaki police 1000
下り坂をオートバイで飛ばすのは、登りより
難しい。
加速を続けないと、上手く曲がれないからで
下り坂で加速しながら曲がるのは
前のめりになってしまう姿勢からも、難しい事が解る。
RZ250くらいだと、もともと前輪が大きいので
それほど苦労なく曲がって行けるけれど。
楽しむバイクと、速く走るためのバイクは
違う、と言う事なのかもしれないけれど
。
オートバイもガソリンで動く。
そのガソリンは、地下資源を掘って
運んで、精製して。
経済原則で動いているから、その経済が
地球のどこかで変わってしまうと
やはり、どこかしら歪みが起こる。
Naomiは、レイモンを追い掛けた訳が
自分でも分からなかった。
れーみぃへの痴漢(笑)か
さっき、自分を誘っておいて
ほかの女の子へ手を出したから(笑)か。
理屈は、ともかく追い掛けたかったのだろう(笑)
オートバイで競争するのは楽しい。
スポーツだから。
でも、ここは道路だから。
さっき、峠で出会ったKawasaki Police1000の白バイが
木陰のカフェで、シトラスのスパークリングを
飲んでいた。
そこに、スピードを上げたR6と
それを追ったRZV。
フランクは、それに気づくと白バイに跨がってマイクを握り「飛ばすなー、捕まるぞ(笑)」
その声に気づいて、Naomiは急ブレーキ。
こうすると、捕まらない事も多い。
でも、レイモンは10000rpmを超えていた
R6のエンジンが煩くて、気づかなかった。
そのまま、下り坂を行った。
スローダウンしたRZVのNaomiの後に、スパークリングを飲み終えたフランクが続き
一応、青いランプを光らせて。
その後に、ゆっくり下っていったれーみぃのRZ250が続く。
「あー、お嬢さん?この先にね取り締まりがあるから。スピードガンの」と、フランクはマイクで言う。
路肩にRZVを止めたNaomiは、ありがとう、と
言った。
れーみぃはついてきて、路肩に停めて「でも、罰金で儲からないよ?」と言うと
フランクは笑って「俺の給料は変わらないもの」
と言うと、Naomiもおかしくて笑った。
青い空に、そろそろ夕暮れ色が写る日曜日。
レイモンは捕まったのかな(笑)
れーみぃは、RZ250に乗ったまま
家に帰った。
大きな庭に、ぽろんぽろん、と
軽快な排気音を立てて。
「ただいまあ」と、のんびりと
声を出すと、白いお家の
重厚なマホガニィのドアが開いて
ママが出て来て「そのオートバイ、どうしたの?」
れーみぃはにこにこと「借りたの。お友達に」
ママものんびりと「そぉ、でもオートバイは
危ないわ」
「乗って見たかっただけよ。アタシね、
ハイウェイパトロールになりたいの」
ママは、少し真面目な顔になって「お巡りさんなら、大学を出てからでも.....」
そう言って、気が変わるのを待つつもりなのだろう、と
れーみぃは思う。
でも、逆らう事もないから「そういう考えもあるわね」と
願書を出した事は、黙って(笑)
お庭、ではなくて
屋根のあるガレージへ
エンジンの音。
12シリンダの重厚なサウンドだ。
「ただいま」
れーみぃのパパは、貿易をしているので
オートバイにも詳しい。
「おお、ヤマハか。いいオートバイだな」と、にこにこ。
「借りて来たの」と、れーみぃはにこにこ。
そうか、とパパはにこにこし
「保険には入っているけれど、ほしかったら
自分のバイクを買った方がいいな」と、パパ。
「ずいぶん気前がいいのね」と、れーみぃは笑う。
パパは、ちょっと謎めいた微笑みで「日本のオートバイは値上がりするぞ」と。
流れ去る時空 ~オートバイのある情景~ 深町珠 @shoofukamachi
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