MotoGuzzi police 1000
第9話 MotoGuzzi police 1000
Guzzi
自由が、たとえば社会などで抑制される時
解放されたいと、知性のある人間は思うので
創造的な事をしたり、音楽や映画、文学に
触れたり。
つまり、目前にある変えられない現実ではなくて
別の空間に、心を遊ばせるから
そういうものは、ひとを魅了する。
Naomiが、オートバイを飛ばすのも
どこかに抑圧があるのだろう。
スピードは、そういうものを解放する。
でも、めぐは
光速を超える速度を手に入れ、無限の自由を
手に入れた。
その魔法を使って、親友リサの心の抑圧を
解放するために、走っている。
燻し銀のオートバイ、YAMAHA TR1と共に。
「なんで日本製なの?」と、
駆け抜ける気流の中、めぐはNaomiに尋ねる。
長いストレートを、5速ギアで流しながら
馬がギャロップするような
エンジンの鼓動を楽しみつつ、Naomiは「おじいちゃんの形見なの」と。
「そっか。」めぐもおじいちゃん好きだったから。
その気持ちはよくわかる。
リサもそうだったから、おじいちゃんの気持ちを
傷つけたと思っていて。
それで、電車の免許を取らなくちゃ、って
思い込んでいる。
夜も眠れないくらい。
真面目だもん、リサは。
めぐは、そんなふうに思う。
町外れの電車車庫への道は遠い。
広い、2レーンの道路の向かい側に
ポリスのバイクが、白く輝いていた。
細身のSilhouette。ガール・ライダー。
バイクはイタリアン、Vのエンジン。
斜めに、シリンダがタンクの下からはみ出ている。
その形に合わせたガソリンタンクには
MOTO GUZZIと、書かれている。
「TR1に似てるね」と、めぐは、Naomiに言う。
肩越しに。
「うん、あっちはイタリアンだから、この国で買うならあれの方がいいんだけど。
安いし。でも、TR1は形見だもん。」そんな事を
Naomiは言った。
形見だけど、乗らないと
オートバイってダメになっちゃうから。
そんな事を言いながら。
馬は、走らないと
こころのストレスで病気になってしまうように
オートバイも、走らないとダメなんだ。
めぐは、そんな事を思っていて、ふと
対向車線のMotoGuzzi 1000Policeを見る。
エンジンを掛け、鮮やかにUターンして
めぐたちのTR1を追って来た。
「なんだろう?スピード違反はしてないし」と
Naomiは思う。
警官はマイクで「ナオミー、めぐーぅ」(笑)
聞き覚えのある声で(笑)。
Reimy
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