第19話
わたしは市内のプールに着ていた。競泳水着で泳ぐ気満々である。しかし、やけに人が少ないと思えば思念の欠片が満ちていた。まさかの水中戦か?
「ミヤビ、このプールの水をシャーベット状にできないか?」
いくら何でも水中戦は無理がある。
「任せておきな」
ミヤビは吹雪を取り出してプールの水に突き刺す。水は凍り始めてシャーベット状になる。
「寒い……」
水着なので仕方ないがこれは厳しい。
うん?
シャーベット状の氷が盛り上がり、目が現れる。思念の塊である。わたしは抜刀して盛り上がった氷を切り裂く。
……手ごたえがない。
再び、氷が盛り上がり、目が現れる。遅れて、道玄坂がやって来る。道玄坂はちゃっかり服を着ている。
やれやれな奴だ。
「この思念の塊は目の下に本体があるのね、この王者の剣で突き刺してくれよう」
長刀である王者の剣を道玄坂は目の下に突き刺す。氷の盛り上がりは沈み思念の塊の目も消えていく。
「ミヤビ、早く、吹雪の術を解いておくれ」
わたしは凍えながら言うのであった。
「あいよ」
シャーベット状の氷は溶けてなくなる。普通のプールに戻るのであった。
さて、泳ぐか?ダメだ、体が冷えきっている。わたしも服を着るのであった。
わたしは夏物を買おうと大き目のスーパーマーケットに来ていた。何故か道玄坂が着いてきている。
「エリカ、見て見て、浴衣があるよ」
青にピンクに白と華やかな浴衣である。
「わたしはアサガオの浴衣がいいな」
道玄坂が早速、買っている。わたしはスカートでも迷うのにチャラチャラした浴衣など。
「はい、エリカの分」
それは向日葵であった。淡い黄色の力強い柄である。結局買う事になり、道玄坂は着替えて浴衣を着ている。
うん?
駐車場の裏に思念の欠片が漂っている。わたしは銀鏡の刀を抜刀して切り裂く。道玄坂の方を見ると鳥の舞を持ってあたふたしている。浴衣での戦闘は無理があるか。いつの間にかミヤビが加勢してきている。ミヤビの動きは早い。その理由を問うてみると。
「わたしは実体無き存在、ササと同じで姿での不利益は生じないわ」
などと、話していると思念の欠片をせん滅する。道玄坂は乱れた浴衣を戻す為にもう一度、売り場に行きたいと言い出す。
仕方がないな……。
でも……わたしも少しだけ。
妙に浴衣がこいしくなってわたしも着る事にした。今日、また、思念の欠片に出合ったら裾を切り裂くか。と、思いにふける。しかし、鏡に映ったわたしは普通の女の子であった。
わたしは立入禁止の校舎の屋上にいた。ここは鍵が壊れているので少しの工夫で入ることが出来る。秘密の告白スポットとして有名だ。道玄坂とミヤビでは色気などないが。わたし達は思念の塊を探していた。
「こんな所に思念の塊なんてあるの?」
道玄坂がブウブウ言う。思念の塊は無いようだ。
「ミヤビ、外れだな」
「おかしいわ、昨日まで思念の欠片が満ちていたのに」
思念の塊は欠片を共に存在する事が多く、ミヤビの昨日の偵察では思念の欠片が満ちていたとのこと。
嫌な気配を感じる……。
振り向くとササである。和傘を握りせめてやる気満々である。こちらには聖痕が三つあるが勝てる気持ちではなかった。良くて相打ちか……。
道玄坂は王者の剣を取り出す。流石、怖いもの知らずの道玄坂である。王者の剣こと長刀の鳥の舞は素早くササに攻撃をする。ササは和傘で簡単にかわすのであった。
「エリカ、こいつ、強いぞ」
ミヤビも短刀の吹雪を抜く。吹雪は短刀でありながら氷の刃で遠距離攻撃が出来る。しかし、氷の刃は和傘によって簡単に防がれる。
「面白い、面白いですわ。短期間でここまで強くなるとは」
ササは歩いて校舎のふちに行くと。
「今日はサヨナラですわ」
ササは屋上から飛び降りる。和傘をパラシュートの様に使いササは地面に着地する。余裕のササに対して、わたしは更なる力が欲しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます