第18話
ある夜の事である。道玄坂が押しかけてきた。
「親友から返事が来ないの」
どうやら、呪い友達の人らしい。お互いに呪いをかけあうのも友情の形である。話によると、鳥の舞を自慢しようと久しぶりに会った後で連絡が取れなくなったらしい。
「聖痕……」
椅子に座っていると静かに呟く。王者の剣こと鳥の舞は聖痕である。聖痕は得た力の代償として、一番大切な人が悪霊になるである。
「だいたい、みのりも贅沢なのよ、わたしの王者の剣が見えないとか言って」
整理しておくが王者の剣は長刀の鳥の舞である。ちなみに、気分を害した道玄坂は強力な呪いをかけたらしい。
「あー呪いは解いたのか?」
わたしの問いに道玄坂は「隔離病棟でヒイヒイ言う程度よ」と言った。だから、解いたのか?と、もう一度、聞こう思ったがやめた。わたしはミヤビの顔を見てお互いにヤレヤレとなる。
「とにかく、隔離病棟でヒイヒイ言ってなければ悪霊になった可能性が高いわね」
道玄坂はLL教室に行く事を提案してきた。道玄坂が黒刀使いとして現れた場所だ。
「あの部屋の音響設備は呪いに向いているの」
道玄坂の言葉にミヤビは、そのみのりなる少女が呪いに詳しいなら、呪いを求めて道玄坂が黒刀使いとしてLL教室に引き寄せられたと同じ様に現れるかもしれない。と、助言する。
翌日、学校のLL教室に向かうと思念の欠片が舞っている。
「これは強力な思念の塊が居る証拠ね」
ミヤビは警戒して吹雪を構える。わたしも銀鏡の刀を抜刀して気持ちを引き締めて、LL教室に入る。
「あら、お客さん、よく見れば、道玄坂と仲間達ね」
そう、道玄坂の親友のみのりであった。
「完全に悪霊化している。道玄坂も構えて」
ミヤビの言葉に道玄坂は目をつぶり鳥の舞を構える。その姿は凛として気高きものであった。ど、道玄坂がカッコイイ、わたしは彼女に任せることした。
「この聖痕である王者の剣に運命があるなら、断ち切ってみせよう」
道玄坂がみのりに切りかかる。みのりは小太刀で道玄坂の攻撃を防ぐ。刹那、道玄坂は更に攻撃する。
「あまい」
みのりは長刀の間合いの中に入り道玄坂に切りかかる。道玄坂はギリギリのところで剣先をかわす。
「強いな、呪いのかけあいは楽しかったぞ」
それは道玄坂が親友のみのりを切り裂く決意表明であった。
「『乱れ突きの舞』」
それは道玄坂の必殺技であった。舞う様に突きを放ちみゆきの小太刀を吹き飛ばす。
勝負ありであった。
「道玄坂、もう、止めろ、彼女は親友だろ」
わたしが止めに入ると道玄坂は長刀を退く。それは、凛正が悪霊になったら同じ思いをするかもしれない恐怖であった。
「ミヤビ、このまま、彼女を元に戻す方法はないのか?」
「言ったはずよ、聖痕は等価交換……しかし、可能性はゼロではない」
ミヤビは吹雪を使って一旦、氷漬けにしてはと語りだす。道玄坂も頷き、みのりは悪霊として氷漬けになりLL教室の奥の小部屋に隠す事になった。
「しばしの別れね……」
道玄坂が扉を閉めると、その表情は見えないでいた。
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