第14話
夕日が赤かった。学校の帰りに正門に通りすがると。光る思念の欠片が舞っている。
強い思念の塊の気配に、思念の欠片がざわついているのであった。すると、大きな音と共に思念の塊の気配が無くなる。
「あら、また、会ったわね」
ササが音も無く近づいてくる。
「思念の塊なら美味しくいただきましたわ」
どうする、逃げるか……それとも……。迷っている暇はなかった。ササは和傘を振るうと今日は骸骨武者が現れる。
「逃げた方がよろしくてよ」
敵を放って逃げた方が良いとはお節介なヤツだ。骸骨武者は抜刀と共に襲いかかってくる。
は、速い!
初手の斬撃はミヤビが助けてくれた。骸骨武者は目の光が違う。紅の妖気をおびた恐ろしい目つきだ。次の斬撃で左腕を深く切られる。
ふぅ、笑えないな。
ミヤビと目が合った瞬間に答えは決まっていた。銀鏡の刀を地面に突き刺して砂ぼこりを立てて一瞬のスキを作る。気が付くと学校を離れ大通りに居た。簡単に言えば記憶が無くなるほど必死に逃げたのである。
ササか……。
あの北神先輩が恐れる訳だ。それは今までに無いくらいの完敗であった。
わたしは空席の電車に揺られていた。乗客はわたしだけであった。外は夕暮れで電車の中に光が差し込んでいる。何だろうこの気持ちは……心に穴が開いて砂時計の様に心の中身が落ちてしまった感触である。
ふと、気付くと座席の正面にわたしが座っている。確かにわたしなのだが髪の毛が白髪である。
「あ、ぁ、あのう……?」
わたしは勇気を出して声をかける。
「この列車は無に向かうの、あなたはすべてを捨てられて?」
白髪のわたしが問うてくる。わたしは何も無い、友達や恋人、家族すら希薄である。一番、大切なはずの凛正を銀鏡の刀の代償として失いかけている。答えに困っていると白髪のわたしはクスリと笑う。
「本当は諦めていないのに不器用なのね」
すると列車のスピードが落ちて駅に着く。
「もう一度、言いうわ。この列車は無に向かうの。迷いがあるならここで降りなさい」
わたしは言われた通り立ち上がり、駅に降りると、辺りが真っ白になる。自室のベッドの上で倒れていたことに気づく。
夢……。
確か、ササに負けて、銀鏡の刀の力を上げようよして、それから、それから……
わたしは起き上がると銀鏡の刀を見る。刃先が紅く染まっていた。わたしが刀を一振りすると元の銀鏡の輝きを放つ。気配に気づくとミヤビが机に向かって座っている。
「刀と契約したの?」
わたしは首を振り、ミヤビの言葉を否定する。
「本当の契約はしていない、その証拠に凛正がまだいる。そう、この刀はほんのさわりだけ……」
ミヤビは何も言わなかった。
「少し休ませて……」
ミヤビは静かに消えていく。わたしは再びベッドに横になり、眠りにつくのであった。
朝の公園。銀鏡の刀を抜き、目を閉じる。手には刀の重さが感じられた。
あれから悪い夢は観ていない。わたしは目を開けてドラム缶に切りかかる。公園と言っても資材置場に近い、この場所はカラのドラム缶が転がっている。妖刀を具現化してドラム缶に切りかかる。
スパっと切れるドラム缶はこの銀鏡の刀には役不足だ。感覚的に以前より切れ味が増している気がする。
「ミヤビ、この程度の力でササに勝てるのか?」
「それはあなたが一番知っているはず」
わたしはどうしていいか分からないでいた。ササが北神先輩と一番違うのはササ自身が戦えることだ。
「ま、こちらから探さない限り、そう会うこともないでしょうね」
楽観的な発言だ。もう少し緊張感を持ってほしいと思うのであった。
「ドラム缶以外になにか修行になるモノはないか?」
「うふふ、こんな時の為にとっておきがあるわ」
「ほーぅ」
ミヤビは袖の奥から種を取り出す。
「信念の塊を種状にしたモノよ。これを地面に撒けば元の思念の塊に戻るわ」
ミヤビは地面に種状のモノを三つほど撒くのであった。すると種は木の化け物に成長する
「面白い、最近腕が鈍っていた気がしていたから丁度いい」
わたしは速攻で思念の塊に切りかかる。一撃目は枝で防がれた。
「まだ、まだ」
態勢を変えてニ激目を放つ。銀鏡の刀は完全に思念の塊をとらえて煙となる。わたしはさらに残りの二体にも攻撃する。
戦いは完勝で終わった。汗と共に実戦の感触を思い出した気がする。
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