第6話
今日は何もする気が起きずにいた。そう、ほっーと授業を受けていた。休み時間もぼっーとしていると。
「エリカ……」
後ろから呼ばれた気がする。わたしを『エリカ』と呼ぶのはミヤビくらいなのに……。
わたしは後ろを向きて誰なのか確認する。
「どちら様で???」
ショットカットの女子生徒であった……イヤ、わたしに『エリカ』と呼ぶ生徒はこの学園には居ないはず。
「お忘れですか?あんなに激しく……」
少女は頬を赤らめて照れくさそうにしている。
「だから、誰だ?」
「もう、いっぱい血が出て大変だったのに」
「誤解されるようなことを言うな!」
「ヒントはLL教室ですよ」
「あ、黒刀使いの少女だ」
「やっとおわかりで」
「やはり、普通の少女であったか」
「そうですよ、わたしはごく一般の人でありますよ。少し呪いに詳しくて、同盟を組む人以外は敵なので、思念の塊で呪いを行う儀式に失敗して大変な目にあいましたの」
前言撤回、普通ではない。
「エリカは呪いに興味はない?呪いに成功してヒーヒー言うのを見ていると、どす
黒いモノがスカッとなって脳内麻薬出まくりですの」
目をキラキラと輝かせて呪いについて語る少女であった。そう言えばまだ名前すら聞いていないな。
「ところで、名前はなんと言う?」
「『道玄坂 桜子』です」
「あ、道玄坂ね、わたしは『神城エリカ』だ」
「NO、NO,です、桜子ちゃんです」
イヤ、道玄坂の方が合っているし。わたしはもう一度『道玄坂』と言ってみる。
「もう、エリカだけですよ」
「はい、はい、道玄坂」
蒸し暑い日に暑苦しいキャラの道玄坂であった。うむ、なにか変なのが仲間になった気分である。
夜、月を見ていた。月が赤く染まっている。血の様な紅ではなく泥のような色をした月であった。ミヤビがいつの間にかに隣にいる。
「今日の月はあなたには似合わないわ」
ミヤビの存在が煙たくなり、わたしはベランダから自室に戻る。しかし、ミヤビはまだベランダにいる。まったく、わたしが寂しいと感じると現れる。
お節介な女狐だ。
少し素直になってみるか……。
わたしはもう一度ベランダに向かうとミヤビは二つ缶コーヒーを持っている。一つをわたしに投げて、一緒に飲もうと言い出す。わたしは缶コーヒーのふたを開けていっきに飲み干す。
「わたしは血塗られた運命、この月の様に泥水がお似合いだ」
「運命は切り開くものよ」
ミヤビはコーヒーを口に付けて呟く。
「なら、わたしは綺麗な月がいいな」
「良い子ちゃんね、綺麗な月で人の心を癒しでもするの?」
わたしは言葉を探して月を見ていた。
「ふ……」
言葉は見つからず、ミヤビ横顔だけが印象的であった。やれやれ、ミヤビには勝てないな。
「銀鏡の刀は思念を切るもの決して癒す物ではない」
ミヤビのセリフは、わたしは戦い続けるさだめかと思い知らされる。うん?携帯が鳴っている。どうせ道玄坂からだ。あれ以来、すっかりなつかれてしまった。わたしは頭をかきながら携帯を探す。ふと、回りを見ると、ミヤビはいつの間にかに居なくなっていた。本当にお節介な式神だ。
今日のお昼は空き教室でお弁当である。わたしはいつも一人で食べているのだが道玄坂桜子こと道玄坂が一緒である。
「エリカのお弁当、寂しいねー」
「うるさい、料理は苦手なのだよ」
確かにご飯にふりかけ、ゆでた野菜にレンジでの肉、これだけである。道玄坂のお弁当を見るとそれは鮮やかな彩が溢れる料理であった。
『一緒に死への道を進みましょう』
?
「あ、思念の欠片にとりつかれた」
ミヤビが冷静に呟く。わたしは仕方なく銀鏡壁を広げる。道玄坂は髪に赤い髪飾りをしている。さっきまでは無かった。
実に、分かりやすい。
わたしは素早く抜刀して髪飾りを切る。そして銀鏡壁をおさめて道玄坂の様子をみる。
「なんですかね?一瞬、エリカのお弁当をくしゃくしゃにしたくなりました」
「道玄坂は思念にとりつかれやすいみたいですね」
ミヤビの言葉に我を取り戻したらしい。
「あぁぁぁぁぁ、あたしのお弁当が床に落ちています」
髪飾りを切った時に弾みで落っことしたか……。
「わたしのふりかけと野菜と肉だけのお弁当を分けてあがるよ」
「ありがとうございます」
道玄坂にお弁当を分け与えたら更に寂しくなった。仕方あるまい、わたしはお弁当を食べるのであった。
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