第2話

 いつの間にか太陽は傾き夕闇が支配しようとしているのであった。


 わたしは校舎からバス停まで歩いていると、携帯が反応する。メールが届いたようだ。

『ようこそ銀鏡の世界へ』


 差出人はミヤビとある。わたしがどうしたものかと考えると電柱の後ろから携帯を操作しているミヤビが現れる。


「ミヤビ、何用だ」


 わたしの言葉にミヤビはこちらに歩いてきて。


「お姉さん、忘れ物だよ」


 ミヤビは長細い包みをわたしに渡す。これは銀鏡の刀……。


 ズシリと重く、さっきまで戦っていたのだと思い出す。


「その刀は聖痕と呼ばれていて、人を選ぶ、エリカは刀に選ばれたのだよ」

「選ばれた?」

「そう、銀鏡の使いてとして、悪霊と戦ってもらう。方法は簡単、退治したい悪霊の近くで銀鏡壁を作りその中で戦うってからくりさ」

「こんな目立つ物、持ち歩けるか」

「大丈夫、銀鏡の刀は幻刀、普通の人間には見ることが出来ない」

「これで悪霊と戦う……だいだい貴様は何者だ」


 その問いにミヤビは嬉しそうにクルリと一回してうちの高校の制服のスカートが舞い上がる。


 わたしはミヤビに取り付かれたのかと思うのであった。


「ミヤビさん、嬉しそうね」

「ふう~わたしもまた長い眠りから覚めてね。そう、元はだだの悪霊さ、悪霊の中にも色々いてね、こうやって忘れ物を届ける変わり者もいるのさ」


 わたしの皮肉にも動ぜずキリリとした眼差しをしている。その瞬間、ミヤビと目が合う。迷い無き瞳は凛と輝いていた。それでいて、その面持は道化に思える。


「ふ、やはり、キツネだ」

「まあね、今じゃある人の為の式神どうぜんだけどね」

「女キツネの式神か」

「ふふふ、わたし達は出会う運命だったみたいね」

「嫌な運命だな」


 わたしは運命だとかは信じないがミヤビは昔からの親友とまで感じていた。


「届け物おわり。エリカ、しばらく、聖痕を得た君の運命がどうなるか見せてもらうよ」


 その言葉とともにミヤビは消えていた。


 帰宅すると朝のサラダの残りを食べる。お腹にたまらない、少し軽かったかとチョコレートを口にする。ゴミ箱にチョコレートの包みを捨てるがいっぱいだ。


 簡単に掃除をして時間を潰す。ベッドの上に置かれた銀鏡の刀に目にとまる。わたしは刀を鞘から抜き、見つめてみる。


 真剣は鏡のようにわたしの顔を映す。昨日までの平和な日常が壊れた実感であった。銀鏡壁はわたしが望まぬかぎり現れないらしい。


 わたしは鏡の前で腰に刀を収める。


 重い……。


 これが真剣の重さなのかと実感する。わたしはベランダの外に出て夜風にあたることにした。今日は湿気が高い、わたしは闇におおわれた夜空を見てみる。


 暗い……星すら出ていない。


 わたしがベランダの手すりにつかまり闇を眺めていると母親が帰ってくる。母親の再婚相手の子供である一つ下の凛正と一緒だ。


 試しに銀鏡を腰にさしたまま出迎える。やはり、反応がない銀鏡の刀は見えていないらしい。それからわたしは何事にも無かったようにご飯を済ませる。自室に帰るとミヤビが椅子に座っている。


「えへ、来ちゃった」

「わたしも少し話したい気分であった……」


 ミヤビと言う客人にペットボトルのお茶を出すのであった。

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