心優しい異世界の少年、死んで日本人に転生する。～常識を知らない無自覚の少年、普通に高校生活を送っていただけなのに、いつの間にか周りの女子を虜にしていました～

第54話

　僕たち一年一組の出店はクレープ屋。

　それはもう決定したらしい。

　他のクラスにも確認を取ったが、どこもクレープ屋をやるところはないらしい。

　いつも通り授業を行い、昼食の時間になった。　

　昨日ずっと寝ていたからか、なぜか今日の授業が長く感じた。

「心君、一緒に食べましょう」

「うん。いいよ」

　雅ヶ丘さんと上野さんと机を合わせ、昼食を食べることにした。

　ここまではいつも通りなのだが、今

日はちょっと違った。

「ねえ、今日は私たちも混じっていい？」

「……東雲さん。珍しいね」

「いやさ、偶には私たちも心君と食べたいなと思って」

「それはいいけど……いつもいる女子はいいの？」

「今日は断っておいた」

「そ、そう」

　嫌だなぁ。

　別に東雲さんと昼食を食べるのが嫌ってわけじゃない。

　むしろそれは嬉しい。だけどそうなると……。

　恐る恐る視線を横に向けると、男子たちが猟奇的な目で僕を睨んでいる。

　怖すぎでしょ……。みんな勘違いしてるけど僕は人気があるわけじゃなくて男子として見てもらえていないと思うんだけどな。

　もしかしたら人扱いすらされていないかも。

「北川君、また馬鹿なこと考えてるでしょ？」

「か、上野さん。どうしたの急に」

「目線がバレバレなのよ。あんなの無視して食べなさい」

「そ、そうだね。ありがとう」

　上野さんって周りに興味ないってい

う割にはよく周りを見ているよね。

　無関心かと思ったけど周りを見てる上で嫌いと言ってるんだ。

　逆にそっちのほうが怖いかも……。

「そう言えば二人とも、昨日はありがとね」

「ですから礼には及びませんよ」

「そうね。別に普通だわ」

「えー何々？　昨日何かあったの？」

　目をキラキラと輝かせた東雲さんが二人に尋ねた。

「別に大したことは起きてないわよ。ただ二人で北川君の家に御見舞に行っただけ」

「え⁉　二人とももうそこまで進んでるの？」

　かなり驚いているが、何だろうその言い方。

　すごく誤解されそう。

　上野さんと雅ヶ丘さんが僕の家に御見舞に行ったことはクラス中の男子が聞いていたらしい。

　仲良くみんなで食べてると思ったけど、みんな僕たちの会話の内容に耳を傾けている。

　そして僕は結局嫌われるんだよね。

　今度男子皆に弁解の余地を与えてもらおうかな。

　まともに話を聞いてくれる人は真以外いないと思うけど。

　僕だって普通の学園生活を送りたい

のに……。

「ねえ心君、今度私も家に行っていい？」

「……う、うん。別にいいけど何もないよ？」

「心君がいるじゃん。楽しみにしておくね」

　僕だけがいるだけなら家に行く必要がない気がするけど。

「東雲さんだけでは不安ですから私も行きましょう！」

「わ、私も東雲さんだけだと北川君が、東雲さんを襲う可能性があるから行くわ！」

「襲うわけないでしょ⁉」

　本当に二人は僕を友達として見てくれているのか？

　ちょっと不安になってきた。

「それよりお弁当食べちゃおうよ。もうあまり時間ないよ？」

「そ、そうね。北川君の家の件は一旦保留で」

　いや、別に来たいのなら来てくれてっもいいんだけど……。

　楓もまた先輩の知り合いができて喜ぶだろうし。

　キーンコーンカーンコーン

　そうこうしているうちに昼食の時間が終了した。

　ギリギリ食べ終わったけどそう言えば五限目は自習で先生が来ないんだよね。

　それだからまだ昼食を食べている人もいる。

　まあ通りすがりの先生に見つかったら怒られるけど……。

　自習中はほとんどの人が自習をしない。

　女子は半分くらい勉強をしているが、男子なんて僕と数人くらい。

　ほとんどの人たちが友達と駄弁ったり、スマートフォンをいじっている。

　相手が楓なら注意したけど、同級生でしかも僕のことを嫌っている男子たちだからなぁ……。

　僕が注意してもあまり聞いてくれなさそうだ。

　ピコンピコン

　スマホゲームの音が教室中に響き渡っている。

「ぎゃははは！　マジであの芸能人不倫したの？」

「マジマジ！　それでさぁ――」

　男子の喉にスピーカーでも入れてるのかと思うほどの大声。

　それが数分でも続くと当然、真面目に勉強をしているクラスメイト達がすごい目つきで大音量を流している男子たちを睨む。

　一番イラついているのは上野さんだ。

　うるさくならない程度に地団駄を踏んでいる。

　相当怒っているみたい。

　当然隣にいる雅ヶ丘さんも、片耳を手で塞ぎながら不便そうに勉強をしている。

　なんでこのクラスの男子たちは……ってそれは違う。

　男子でもあまりクラスでも目立たな子はゲームはしているけど、イヤホンをしているし、中にはしっかり勉強をしている人達もいるので男子と一括りにするのはよくない。

　だけど本当に少しうるさいな。

　話を聞いた限り、番長の立ち位置にいた金剛君が学校に来なくなってしまったので最近の男子は好き放題やっているそう。

　それって結構僕戦犯かましてない？

　それなら僕が暴力を振るわない金剛君になればいいんだ。

「ちょっと少しうるさい――」

　机から立ち上がって注意しようとした瞬間、教室の扉が勢いよく開いた。

　ドアの開け具合からしてかなり怒っている。

　そう。ここからが僕たちの地獄の始まりだった。