第52話 ドキドキの看病ーー完

「い、頂きます」


 頬を赤らめ隣にいる楓と同じように下を出して、舐め始めた。


「ちょ、ふ、二人とも――」


 ペロっと舌を巻くように舐め始めた。

 視線を横に向けて、上野さんに助けを求める。


 しかし上野さんは両手で目を隠し、あわあわと慌てていた。


 そうだ。彼女にはここまで変態的な行為に対して免疫力がない。


「どう? 兄さん」

「体調は良くなってきました?」

「なるわけ……ない」

「じゃあもっと……」


 僕は終始乳首を舐められ続けた。

 抵抗をしようとしたからか、体がさらに重くなるのを感じた。


「二人とも、今日はもう帰ってもらって構わないよ」


「そうね、長居しちゃったしそろそろ帰るわ」


「さようなら、心君。また明日」


「うん。さようなら」


 ……ん? また明日?

 今確かに雅ヶ丘さんはそう言ったよね?


 これはまた乳首を舐められるのか?

 というか雅ヶ丘さんってあんなに淫乱なことする娘だったっけ……。


「じゃあ兄さん。私は夕食作って来るね」


「楓って料理できるの?」


「だから人並みにはできるって。お粥

でいい?」


「うん。ありがとう」


「はーい。じゃあ作ってきます」


 楓も雅ヶ丘さんも、ものすごく優しい子なんだけどな……。


 あの変態的な性格が無ければ。

 そう言えば文化祭のことはどうなったのだろうか。


 僕がいないから矢島さんと、おそらく東雲しののめさんが代理でやってくれたとは思うけど……。


 枕元にある携帯を手に取って画面をタップする。

 すると渡辺先輩から十件くらい僕を心配するメールと、東雲さんから一件のメールが届いていた。


 まず渡辺先輩に感謝のメールを送った後に、東雲さんのメールを開いた。


『心君、具合はどう? 今日は心君がいないから代わりに私と雅ヶ丘さんと上野さんが手伝ったんだけど、意外と順調に話が進めてよかったよ。ところで私たち一年一組の出店はクレープ屋さんになったから。早く風邪を治して学校に来てね、また一緒に学校へ行こう! お大事に』


 そうか……雅ヶ丘さんと上野さんも手伝ってくれたんだ。

 あの二人の顔が妙に疲れていたのもその理由が大きいのかもしれない。もちろん、男子の相手をするのにも疲れたみたいだけど。


 その後に僕の家に来てくれたんだ。

 次会った時にちゃんとお礼をしなくちゃ。


 それともう一つ、まさか出店がクレープ屋さんになるなんて。

 僕が昨日提案しようとしていた内容が偶然にも他の誰かと重なったわけだ。


 よかった。クレープ屋さんなら幅広い年齢層で好まれるし、楓も喜んで来てくれそう。


 ガチャリ


「兄さん、お粥できたよー」


「ああ、ありがとう楓」


「あれ、兄さん少し顔色よくなった?」


「そう?」


「うん、なったよ! じゃああとお粥食べてゆっくり寝れば大丈夫だね」


「そっか。ありがとう」 


 でも確かに少しだけ気分がよくなったかも。

 まだ体調が悪いのは確かだけど。


「体起こせる?」

「うん。大丈夫だよ」


 自分で体を起こして、楓がお盆に乗せてきたお粥を食べようとする。


 しかし、楓は僕の伸ばした手を止めた。


「兄さんはまだ病人なんだから、私が食べさせてあげるよ」


「で、でも流石にそこまでさせるのは悪い気が……」


「全然悪くないよ。むしろ私が食べさせてあげたい気分なんだから」


「そ、そっか。それならお願いできる?」


「もちろん!」


 楓はスプーンでお粥をすくって僕の口に近づけてくれた。


「はい、あーん」

「――あっつ!」

「ああ、ごめんごめん。冷ますの忘れてた」


 もう一度お粥をすくい、今度は自分の口に近づけた。


「ふー、ふー」


 冷ましてくれるのはありがたいけど、なんで少し胸をはだけさせているんだ……?

 そのせいで楓を直視できない。

 いつもならそこまで胸を強調したりしてこないのに。


「兄さんどこ見てるの?」


「い、いや何も見てないよ」


「本当にー?」


「本当だって」


「まあいいや。はい口開けて?」


「う、うん、頂きます」


「あーん」


 今度は普通に口に入れても熱くなく、美味しく頂けた。


「楓って普通に料理できるんだね」


「まあ家庭科とかでもやるからねー。じゃあ兄さん早く食べて今日はもう寝てね?」


「うん。そうさせてもらうよ。これ以上みんなに迷惑はかけられないからね」


「自分の体を心配してよ」


 お粥を楓に食べさせてもらった後、薬を飲んで大人しく眠りに就いた。


 あれだけ昼間寝ていたのに、僕はすぐに夢の世界に意識を落とすことができた。


 今日は楓に感謝しかないな。


 あれだけ家では怠けていたのに、僕が体調を崩したら過保護のようにずっと付き添ってくれた。


 本当にこの二日間は色々あった。


 また数日後に会長と会うことになっているが、楓のおかげで乗り切れそうだ。

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