第43話 学園祭の実行委員会になるのは運命だったのか

 先生は僕の正体を知りたがっている。


 妹といい、僕はそこまでみんなと違うことをしているのかな?

 まさか異世界人とは気づいてないよね?


 ……大丈夫だよね。

 少し不安になった。


 明後日は確認テスト。その後は本格的に学園祭の準備に入るらしい。


 僕が通う高校、橋姫中央高校の学園祭はかなり力が入っているらしく、何回かテレビに出たことがあるらしい。


 それくらい大規模な学園祭。かなり早い時期から準備を始めるみたいだ。


 開催日は九月の下旬。

 今は八月の中旬だから一カ月ちょっとある。


 おそらく先輩方は確認テストの勉強よりも、そっちを優先すると思う。

 でも僕も初めての学校行事。

 楽しみではある。


 それから二日後。

 確認テストが終了し、各々部活動や帰宅をしようとしていた頃。


「ちょっとみんな、話を聞いてほしいんだけど!」


 東雲さんが呼びかけると、クラス全員が一斉に東雲さんの方を向いた。

 特に男子の反射速度なんて異次元レベルに速かったぞ。


「学園祭の事でクラス委員の矢島さんから話があるんだけど聞いてくれない?」

「聞きます!」


 いち早く返事したのはまことだった。

 矢島恵美やじまえみ。クラス委員長でよく東雲さんと一緒にいる子。


 クラスのアイドルとは呼ばれていないが、顔が整っていて普通に美人のレベル。


「学園祭を実行する委員会がクラスで二人必要なの。私がやるから残り一枠誰かってくれるって人いない?」


「……矢島さんがやるならと思ったけど実行委員って面倒くさいしな」


「うん。流石に面倒くさいくさいな」


 誰もやらないのか。矢島さんがやるなら残り人枠は男子がやるべきだろう。

 正直言って帰りが遅くなると楓にどやされるからあまり気は進まなかったが、誰もいないのなら仕方ない。


 僕はすっと手を挙げた。


「北川君……」

「誰も立候補する人がいないのなら僕が手伝いますよ」


 このままだとやりたくない人が無理やり実行委員にされる可能性もあるし、僕がやっておいた方がいい。


「心君、正直実行委員は大変だけど大丈夫?」


「僕は平気。誰も立候補しないんじゃ仕方ないもん」


「やっぱり心君は優しいですね」


「別に当たり前のことだよ」


「それを当たり前だと思えてる辺り優しいんですよ。私も実行委員じゃないですが、手伝ってほしいことがあったら言ってください」


「ありがとう、雅ヶ丘さん」


「礼には及びません」


「言っておくけど私にも声かけてね」


「上野さんまで……ありがとう」


 上野さんなんて前は目を合わせるだけでも睨んできていたのに。


 二人はそう言うと今日は帰っていった。

 なるべく頼らないようにするけど、本当に間に合わないときは手伝ってもらおう。

 楓にもちゃんと連絡しておかないとな。


「男子諸君は心君を見習いなさい!」


 東雲さんは冗談っぽく男子にそう言っている。 


「ありがとね、北川君。立候補してくれて」

「大丈夫だよ。矢島さん、一緒に頑張ろう」

「う、うん!」


 二人で四階の生徒会室に行き、実行委員会になったことを言う。

 今日は会長が不在で、副会長の男の先輩に言った。


「北川心……そうか、お前が噂の」


 かけている眼鏡をクイッと少し上げ、僕を見た。


「僕が何か……」

「いいや、何もない。こっちの話だ」

「そうですか。失礼します」


 少しミステリアスな雰囲気の副会長だった。


「今日は会長いらっしゃらなかったんですね」


「この学校の生徒会長ってどんな人なの?」


「校則にものすごく厳しくて、とんでもなく美人さんなんだけど校内中から嫌われているらしいよ」


「なるほど。厳しすぎてみんなから嫌われているのか」


 それなら会長さんもただ几帳面な性格でだけで、悪気があってやってるわけじゃなさそうだ。

 それに、そもそも校則を破っている生徒がいけないんだ。


「今北川君少し会長さんのこと可哀想って思ったでしょ?」


「まあ、思ったけど」


「だよねー北川君が編入する前までは私たち新入生もそう思ってたの。でもいざ対面してみればわかる。すごい細かいことをずっと怒鳴ってきて永遠に説教が続くから」


「変わった人だね。いくら校則を遵守しているからと言っても、いろんな人に怒鳴れるなんて」


「でも正直私も怒鳴られたこと一回あるけど、かなり理不尽だよ?」


「例えば?」


「廊下を歩いてたら、そっちは右側通行だって怒られた」


「……それはまた面白い点を付いてくるね。


「心君も今度見たら絶対関わらない方がいいよ」

「うん。会う機会があればね」


 今日は実行委員会になったことを知らせるだけで終了。


 明日から放課後に生徒たちで発表するものや、どんな感じのお店を出すのか決めることになった。

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