第23話 たわわに実ったおっ○い
周りの人なんて酷い人ばかり。
彼女はそう答えた。
「
「……………………」
彼女に微笑んで、僕はそのまま下校した。
下校の準備をしている間、上野さんは石像のように体を硬直させ、驚いたように僕を見ていた。
ガチャリ
家の扉を勢いよく開け、大きな声で今帰ってことを伝える。
「ただいまーっ! ごめん
……………………。
……………………。
返事がない。いつもならリビングから飛び出して出迎えてくれるのに。
「……楓? 寝てるのか?」
すると玄関にある違和感を抱いた。
なぜならいつも僕が靴を置いている場所には既に靴が置いてあったからだ。
サイズは楓より一回り大きいくらい。
新しい靴を買ったのか? しかしその白い靴は丁寧に使われている跡が見える。
綺麗に保たれて入るが、決して新品というわけではない。
お客さんかと思ったが、リビングにもいない。
「……ら」
「わ……が……よ」
とても小さいが、奥の部屋から聞こえてきた。
これは誰かと話しているのか?
それは脱衣所から聞こえてくる声だった。
一体あそこで何をしているのか。
前回はノックもせずに開けて大目玉をくらったので、今回はちゃんとノックをしてから入ろうと扉に近づくと。
「やっぱり私の方が大きいですよ!」
「そうかしら? でも楓は少し寄せてるじゃない」
「自然ですよ! ほら!」
「確かに中学生にしては大きいかもしれないけど、やっぱり大人には勝てないようですね」
「歳一つしか変わらない!」
この声は……とても聞き覚えがある。
というか最近一番聞いている声だ。
……雅ヶ丘さんがなんで家にいるんだ。
それにしてもまた脱衣所で何をしているんだ。
二人とも何かを競い合っているみたいで、僕が帰ったことも気付いていない様子。
「じゃあちゃんと測ってみる?」
「ええそうですね、私巻き尺取ってきます!」
ガラガラガラッ
僕と二人の間にあった扉が開かれ、僕は二人と目が合った。
これで二回目だ、二人の下着姿を見るのは。
しかも今回は多少の沈黙があったので、前回よりも長く見てしまった。
なんでこうなるんだ。盗み聞きなんかせず、堂々とノックすればよかった。
「……に、兄さん?」
「……た、ただいま楓。それに雅ヶ丘さんも」
やばい! 殴られる!
そう思ったが、二人は僕の予想の斜め上をいった。
「に、兄さん! 丁度良かった、よく見て、私と琴葉さんどっちが大きい?」
手で隠した胸部を楓は大きく広げた。
「――な、楓⁉」
開き直ったとでもいうような行動に慌てふためいてしまい、尻餅を大きく着いてしまう。
「楓、何を考えているの⁉」
「琴葉さんはそうやって恥ずかしがっていればいいですよ。私は近い未来、兄さんとする時に恥ずかしがらないように今から耐性を身に着けておきますから」
「な、近い未来に――⁉ ダメよ、絶対!」
「それは琴葉さんが口を挟むことじゃないですよ。まあ、琴葉さんならいざ兄さんとする時が来ても、恥ずかしがってずっと進展しないでそのまま破局するのがオチですね」
「そんなことない! 私はそんなヘタレじゃないです!」
一体二人は何を言ってるんだ。
目の前にいる美少女たちの下着姿が、あまりにも強烈で会話の内容が全然頭に入ってこない。
「さあ兄さん、どっち?」
「心君、決めてください!」
ドンッ
力強く一歩前進し、僕に近づいてくる。
本当に二人はどうかしてしまったみたいだ。
「ちょっと二人とも、言っている意味わからないんだけど」
「私と琴葉さんのおっぱい、どちらが大きいのか聞いてるのよ!」
「はぁぁ⁉ そんなの比べられるわけないだろう!」
なんで妹にあんな怒られ方をされなくてはいけないのだ。
「二人ともまずは服を着てくれ!」
「兄さんが答えてくれるまではこのままでいるから!」
そんなこと言われても……大変恐縮ではございますが二人の胸はどちらも大きく、とてもたわわに実っておりますして、比べようがございません。
年齢的に楓はまだ中学生だからこれからもっと成長するかもしれないけど、それは歳が一つしか離れていない
雅ヶ丘さんもあり得ることだ。
つまりこの場において最善の選択肢は――。
「どちらの胸も最高です!」
「「……………………」」
あれ? 二人が黙ったままだ。
恐る恐る顔色を窺うと、二人は呆れ交じりの笑顔でため息をついた。
「はぁ……まあ、兄さんならそう言うとは思っていたけど」
「まさか最高なんて言われるとは思っていませんでした」
二人は顔を赤く染めたまま、服を着た。
それから約三十分後。いや、実際そんなに経過していないかもしれない。
もしかしたら経過しているかもしれない。
先ほどから時間の感覚が鈍い。
というか先ほどのハプニングのせいでそんな感覚は麻痺しているのだ。
僕にも非があるかもしれないが、脱衣所でお互いのおっぱいの大きさを測ることはもうこれっきりにして欲しい。
前回もおそらく今日と同じことをしていたのだろう。
「兄さん、今日の夕食は何?」
どうして楓は何事もなかったように振る舞えるんだ……。
「今日はカレーだよ。あともう少しでできるから大人しく席に着いていてね――」
鍋の中にあるカレーを混ぜていると、右腕に変な感触が走った。
「楓、何をやって――」
「しー。琴葉さんにバレちゃうでしょ?」
「で、でも……」
「私のおっぱい気持ちい?」
「最近の楓は変だぞ?」
やばい、右腕が楓のふくよかなお胸の谷間に――。
「私を変にさせたのは兄さんでしょう?」
「僕が……?」
「毎日毎日あんなことされたら意識しちゃうよ」
「できればあんなことっていうのはやめてほしいんだけど……」
ただただ兄としての立ち振る舞いをしていただけだし。
どんどん右手の力が抜けて行く。
これが女子の魅惑というものか。
なんて強力なんだ……。
限界を感じ、おたまを離しそうになった瞬間。
ゴンッと鈍い音が楓の頭上から聞こえてきた。
雅ヶ丘さんが楓の頭上を軽く手刀打ちしたのだ。
「兄さんの料理の邪魔はいけませんよ、楓?」
「い、いったーって……こ、琴葉さん? 怒ってる?」
「まさかまさか、さあ私たちは席に戻りますよ」
親猫のように楓の首元を掴んで、テーブルまで連れて行った。
雅ヶ丘さんのおかげで助かった。
いくら妹とはいえ、あそこまでされると意識してしまう。
高鳴る鼓動を抑えながら、カレーの調理を再開した。
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