心優しい異世界の少年、死んで日本人に転生する。~常識を知らない無自覚の少年、普通に高校生活を送っていただけなのに、いつの間にか周りの女子を虜にしていました~
第18話 言えない。下着を見て気絶したなんて
第18話 言えない。下着を見て気絶したなんて
「……兄さん、随分楽しそうなことしてるね。お邪魔しちゃったかな?」
冷徹な声で僕を見る楓の目は今まで見たことないくらい、魂が宿っていなかった。
「違うんだ楓、これには深いわけが……」
「大丈夫。気にしてないよ、兄さんはモテることは何となくわかってたし」
それが楓の本心なのか?
だめだ、あんな表情見たことないからわからない。
「あの顔どこかで……あ、ショッピングモールにいた……!」
「……へ? あ! ハンカチ拾ってくれた人⁉」
「この子が楓さんだったのね」
「私もびっくりです」
……なんだこの雰囲気。
二人とも初対面というわけではなさそうだが。
「二人は知り合いなの?」
「知り合いというか、ちょっとショッピングモールで色々あって」
「あんなに兄のことを慕っている妹なんか見たこと――」
「ちょっと待ったぁぁぁぁ! ちょっと来てもらえます⁉」
「え、でも今は勉強中――」
「兄さんは黙ってて! そこで正座! この浮気者!」
「は、はい! ……って浮気者ってなんだよ」
「うるさい! そこで待ってなさい!」
一体僕の妹はどうしてしまったんだ……。
あんな怒号を放つような子じゃなかったはずだ。
まあ、まだ出会って一カ月程度しか経ってないが。
それにしてもまさかあの二人が知り合いだったとは。
確かショッピングモールとか言っていたな。なら僕もいたはずだし……あ、トイレに行っている時か。
そう言えば雅ヶ丘さんが女子中学生の話をしていたな。
というかそんなこといいから早く雅ヶ丘さんを連れ戻さないと。
部屋の扉をそーっと開ける。
楓が雅ヶ丘さんを連れだしてから軽く三十分は経った。
しかし、一向に彼女が戻って来る気配がない。
一体楓は何をしているんだ。
楓の部屋も確認してみたが、いない。
となると二階にはいないようだ。
まさかあの二人一階に行ったのか? テスト一週間前なのだからあまり邪魔はしないでほしい。
あとで楓にはよく言い聞かせとく必要がありそうだ。
まあ、あんな状況を見られた僕が言える立場じゃないと思うが。
そのまま階段を降り、リビングもキ
ッチンもいない。
トイレか? 女子はよく数人でトイレに行くみたいなこと聞いたけど、トイレの明かりも点いていない。
まさか外に……? いやいや、流石にそれは無いだろう。雅ヶ丘さんだって勉強が嫌になったわけじゃないだろうし、きっと天真爛漫な妹に振り回さ
れているのだろう。
こんなことなら喫茶店にでもしておけばよかった。
今日は一回を使う予定は無かったので、電気は全て消してある。
しかし、奥の突き当りの角を右に曲がった部屋だけ電気がついていた。
あそこは洗面所……? 洗面所でもあるが、あそこは脱衣所でもある。
意味が分からない。こんな悠長なことしている暇は、彼女には無いのだ。
ずかずかと脱衣所まで歩いて行き、勢いよくドアを開いた。
「雅ヶ丘さん、そろそろ勉強を――……ってなんで二人とも下着なんだよ⁉」
「キャー⁉」
「兄さんの変態‼」
「ご、ごめん!」
脱衣所に楓と雅ヶ丘さんはいた。
確かにいたのだが……二人とも下着
姿だった。
流石にそんな状態とは知らず、ノックもしなかった僕も悪いが、なんでいま二人は脱いでいるんだ⁉
急いで閉めようとするが、なぜか扉が閉まらない。
脱衣所に続く扉は、引き戸で僕がびっくりした拍子に体重をかけてしまって扉がレールから外れてしまったのだ。
「兄さん早く閉めて!」
「閉めようとしてるけどこれ閉まらない……!」
「じゃあ目を瞑って!」
「は、はい!」
大人しくその場で大人しく目を瞑った。
視界が暗闇に閉ざされる。
しかし、人というのは不思議なものだ、視界が暗闇になるとどうしても頭の中で鮮明な景色を想像してしまうのだから。
そう。あの水玉模様の下着を穿いた楓と、純白の下着に身を包んだ雅ヶ丘さん。
見たのは一瞬なのにどうしてこんな鮮明に覚えているのだろう。
シュルッ
二人の服を着替える音が、僕の耳を突いた。
またまたしかし、人というのは不思議なものだ、視界が遮断されて音からの情報しかない分、余計にその場面を想像をしてしまう。
やばいやばい……妹である楓にそういう情は湧かないが、というか湧いたら犯罪になりそうだが、雅ヶ丘さんは別だ。
忘れろ……。僕はそんな変態な人間じゃなかったはず。
煩悩を消し去れ。しかし、そう思えば思うほど意識してしまう。
だめだ、体中が熱い。
別に今日は特別熱いわけでもないのに、ふらふらする。
「兄さん⁉ だ、大丈夫なの、ふらふらしてるけど――!」
「た、大変! 北川君を早く冷やさないと――!」
二人の焦った声も段々と遠くなっていく。
目は瞑っていた。
視界は元から真っ暗。
だが、脱衣所の証明が少し僕の瞼を貫通していたので、真っ暗闇というわけではなかった。
しかし今回は本当に視界が真っ暗になっていく。
僕はそのまま意識を失ってしまった。
――言えない。雅ヶ丘さんの下着で興奮し倒れてしまったなんて、絶対に言えない。
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