心優しい異世界の少年、死んで日本人に転生する。~常識を知らない無自覚の少年、普通に高校生活を送っていただけなのに、いつの間にか周りの女子を虜にしていました~
第17話 不機嫌な妹と、上機嫌なクラスメイト
第17話 不機嫌な妹と、上機嫌なクラスメイト
雅ヶ丘さんが来る時間は十時ごろ。
家の場所はメッセージアプリで住所を教えた。
それまで自分の部屋を片付ける。
まあ、日頃から掃除はしているのでそこまで時間はかからなかった。
ピーンポーン
十時になる約五分前に家のチャイムが鳴った。
流石雅ヶ丘さん。五分前行動を心がけているようだ。
「はーい」
階段を下りて、家の扉を開けた。
そこにいたのは私服の雅ヶ丘さんだった。
白いワンピースに綺麗なピン止めを着けている。今は夏場なので露出は多めなのにも関わらず、清楚感もしっかりとある。
初めて私服を見たが、人によっては気絶するレベルだぞ。
もちろんいい意味で。
「こんにちは、北川君」
勉強道具が入っているであろう手さげバッグを前に持って軽く一礼した。
「こんにちは雅ヶ丘さん……その、私服素敵だね」
「ありがとうございます。結構悩んだんですよ?」
「そうなんだ……どうぞ中に入って!」
「お邪魔します」
そのまま自分の部屋に招いて、待っていてもらった。
「何か飲み物持ってくるから待ってて」
「お構いなく」
僕が下に行くと、妹の楓もどたどたと降りてきた。
「兄さん、もう来たの?」
「うん、約束は十時だからちょうどいい時間じゃないかな?」
「そうだけど……普通数分でも遅刻してくるでしょ。それじゃ好意あるって言ってるような物じゃない」
「何ブツブツ言ってるんだ?」
「何でもない!」
一体昨日の夜からどうしたんだ?
まあ今は楓のことより勉強だ。
お盆に麦茶が入ったグラスを置いて二階に上がっていく。
ゆっくりドアを開けると、雅ヶ丘さんが僕の部屋の中をうろうろしていた。
何か探しているような雰囲気だが……。
「あのー……どうしたの?」
「いや、北川君の部屋の中にあるいかがわしい物を探しているのだけれど……」
「あるわけないでしょ!」
最近というか、ショッピングモールに行ってからというもの彼女も少し変になってきた。
頭を撫でて欲しいとか言い出すし。
「さあ、勉強するよ」
「ええ。よろしくお願いします」
昨日は確か国語の古典を勉強したんだっけ。
じゃあその復習からやっていこう。
「雅ヶ丘さん、この文章を現代仮名遣いに直してみて?」
「ええ。余裕よ、昨日あなたにたくさん仕込まれたもの」
「できればその言い方はやめてくれないかな」
しかし本当だ。
すらすらと答えを書いている。
やっぱり地頭が悪いというわけではなさそうだが……。
どうしてあれだけ勉強してもできるようにならないのだろう。
「はい! できました!」
「じゃあ貸して、答え合わせするから」
「もし全問正解していたら……」
「……わ、わかったよ。頭を撫でればいいんでしょ?」
「はい、その通り!」
もしかして頭を撫でてもらうために頑張っているのか?
……ってそんなわけないか。
す、すごい。採点をしているが、本当に全て解けている。
以前は現代仮名遣いすら知らなかったのに、ここまでくると僕の教え方が上手なのかもしれないと錯覚してしまいそうだ。
「本当に昨日から一晩しか経ってないんだよね?」
「はい。昨日は日付が変わるまでひたすら解いていました……!」
「それでもこれは凄いよ。本番もこの調子でいけば平均点近くは取れるよ!」
「では学年の中堅も夢じゃないと……⁉」
「うん、この調子でいけばきっと行けるよ!」
「でしたら、はい!」
お辞儀をするように頭を下げ、なでなでを懇願してきた。
まさか本当にこれをしてもらうために勉強を頑張ったというのか⁉
いつものように彼女の頭を撫でた。
「今回は少し長めでお願いします」
「う、うん」
雅ヶ丘さんは顔を僕の胸元に寄せてきた。
これは流石にやばいんじゃないのか?
なぜ彼女が喫茶店ではなく僕の家がいいと言ったのか、ようやく理解できた。
なでなでならクラスの男子に頼めばいいじゃないか。
おそらくあの男子たちはお金を払ってでもやりたがると思うが……。
少し長めと要求されたので、いつもより少し長めに彼女の頭を撫でる。
それにしても本当にきれいな髪だ。
宝石から作りましたと言っても、未だに普通の常識を全て知らない僕は信じてしまいそうだ。
もう何度も思ったが、頭を撫でられるってそんなに気持ちいいのか?
僕は長男なので、頭を撫でられたことなんかない。
楓も本当はもっとやって欲しいのかな?
楓は我が儘そうに見えて、決して本当にしてもらいたいことなどは我慢するタイプ。
まだ出会って間もないのに、そこまでお兄ちゃん面するのはどうかと思い滅多な時にしか撫でない。
今度妹を撫でてみよう。
流石にやり過ぎると嫌われるので一週間に一度くらいでいいだろう。
ガチャリッ
その時だった。部屋の扉が開いたのは――。
いつもの僕なら足音で察知できるのに、今回ばかりはそれどころじゃなかった。
……ここからが、修羅場の始まりだった。
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