第14話 一目惚れ?
私の名前は
しかし、最近私は自分でも成長できたと思っている。
私はおそらくクラス中から根暗陰気女とでも言われているだろう。
女子は大丈夫だけど男子はみんな怖い。
主に金剛とかいう謎の男。
入学当初から何かとちょっかいを出してくるので本当に苦手だった。
でも周りに助けてくれるような友達はいない。
唯一の友達と言えるのが
彼女は明るくて、みんなから好かれるタイプなのであろう。
私も彼女とは普通に喋れるし、からかったりもできる。
しかし彼女は男女共々人気が高く、周りにはいつも誰かしらいた。
私には親友と思える人がいない。
このままで本当に良いのだろうか。
勉強もできない。でもそのことを知られたらもっと周りから嫌われてしまう。
そう思うと誰にも言えなかった。
その時だ。編入生が来ると聞いたのは。
男子か女子かわからないけど、その子は私の隣の席に来るとことは知っていた。
だから声をかけてみよう。
男子だったら……ちょっと厳しいかも。
そう思って編入生が来るのを少し心待ちにしていたのだ。
そして迎えた当日、編入生は男だと聞いた。
私は心の底から落胆した。
前すら向くことができない。
そうだ。まず人に頼ろうとしているからこんな風になってしまうんだ。
自分で自分を悪者にし、追い込んだ。
「初めまして、北川心です。これからよろしくお願いします!」
男子の声ではあるが、どこか優しそうで心を落ち着かせてくれる、そんな声がした。
茶髪に綺麗なエメラルド色の瞳。かっこいいというより可愛い顔立ちをしていて、とてもクラスにいる乱暴な男子とは似ても似つかなかった。
とても誠実そうな子。
だから彼が席に着いた時は、勇気を振り絞って声をかけた。
すると彼はドギマギして私の方を向いてくれた。
その素振りが異様に可愛く思えてしまって、彼の前では自分の本当の姿を出せるような気がした。
もちろん、彼は人気がある。主に女子に。
だけど彼は私に話しかけてくれた。
だから私も彼に積極的に話しかけるようにした。
勉強が苦手なことを知っても馬鹿にせず教えてくれた。
授業中、何度も何度も質問しても笑顔で答えてくれたんだ。
だから私は彼に出会った日に、彼を意識するようになった。
これは一目惚れというのだろうか。いや、半分はそうかもしれないが、半分は違う。
半分は一日過ごしてわかった、あの優しい性格に惚れたんだ。
私が最も苦手な男子に天罰を与えてくれた。
あの時はまるで彼がヒーローのように見えた。
今、私はそんな彼とショッピングモールに来ている。
腕も組んじゃったし、一緒に写真も撮っちゃった!
これってもうカップルのようなものじゃない!
……っと、恋愛経験ゼロの私が言っております。
一人で浮かれては、落ち着かせ……をずっと繰り返していた。
そんな時、私が座るすぐ横の席に、二人の女子中学生が座ってきた。
二人ともとても美人で中学生とは思えない顔立ちをしている。
緑色のロングヘアーのこと、茶髪の女の子。
本当にどちらも美人だ。
こんなに美人なら学校でも大変だろうなー。とか思ってしまっていた。
「ねえ愛ちゃん聞いてよ。最近兄さんの料理が美味しいの」
「いいことじゃない。確か初めて食べた時はお腹を壊したんだっけ?」
「そうなの。最初の頃は本当に怖くて食べれなかったけど昨日作ってくれた肉じゃがなんかもう最高だった!」
そう言う彼女の顔はとても輝いていた。
いい兄妹だな……。
私は一人っ子なのでそういう経験は味わえない。
でも彼女の笑顔を見ると、私もお姉ちゃんかお兄ちゃんが欲しいと思ってしまった。
そう言えば北川君も妹がいるって言ってたっけ。
一体妹はどんな子なんだろう。
彼が言うには怠け者って言ってたけど北川君の妹なら絶対いい子だし、可愛い。
ちょっと妹に嫉妬してしまった。
「愛ちゃんは一人っ子何だっけ?」
「そうだよ。だからちょっと羨ましいな」
「私が?」
「そう。そんな優しいお兄さんがいて」
「優しいけど、ちょっと過保護すぎるところもあるかもねー」
「そこがいいじゃない。普通、その歳くらいになってくると口も利かなくなるくらいなのに」
「まあ、家に限ってそんなことないよ」
「でもお兄さん、こんな可愛い子と一つ屋根の下なんて幸運よね」
まったくその通り。盗み聞きしてしまって申し訳ないけど、女子から見てもあの子は可愛い。
何か間違いが起こらないか心配になる。
「そうかな? でもお兄ちゃんもまあまあイケメンだよ?」
「いいなー。今度お兄さん、私に紹介してよ」
「だーめ、兄さんは私のだもん」
「……はぁ。このブラコンめ」
「いいの。本当に普段兄さんと過ごしていると、周りの男子がしょぼく見えてくるから」
「それは少し言いすぎじゃない?」
「いいや、本当。性格もよくて真面目で勉強熱心で挙句の果てには顔もいいって、前世でどれだけの徳を重ねればああなるのかな」
若干不満そうには言っているけれど、彼女の顔はどこか嬉しそうだった。
ピピピピピピッ
彼女のスマホが突然鳴り出した。
「あ、もうこんな時間。そろそろ行こう!」
「そうだね。行こうか」
二人は何か用事があるのか、急いで席を立った。
その拍子に、彼女の制服のポケットからハンカチが落ちてきた。
私は急いでハンカチを拾い、彼女に手渡す。
「あの、ハンカチ落としましたよ……?」
「……え? ああ、どうもすいません。ありがとうございました!」
そう言うと彼女は一礼をし、友達と共に去っていった。
私は彼女の笑顔にどこか既視感を抱いた。
あの眩しい笑顔……誰かに似ていた。
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