第8話 東雲さんとの登校
初日の登校が終わり、翌日。
朝は昨日の残りの肉じゃがを食べた。
「
「わかったけど……何かあるの?」
「ちょっと帰りに友達とお店に行く約束をしてるんだ」
「初日で友達作れたんだ……! やっぱりすごいねお兄ちゃんは」
「それほどでもないよ。じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい!」
楓はまた遅刻ギリギリに行くつもりか。
お兄ちゃん的にはもう少し余裕を持ってほしいが、妹曰く自分は優等生なのでいいらしい。
何がいいのかよく分からないが、あの怠惰な楓が優等生なんて信じられない。
まあ、過保護すぎるとうっとおしがられるのでそこまでしつこく言うつもりはない。
家から出て、高校に向かう通学路。
徒歩二十分という特別遠くもなければ近くもない距離に橋姫はしひめ高校はある。
僕と同じ制服を身に纏った男女が周りにたくさんいた。
みんな友達と話したり恋人同士で一緒に行ったりと、かなり充実してそうな高校生活を送っているみたい。
もう少し早く生まれていれば、遅れを取らずに済んだかもしれないな。
そう思いながら通学路を歩いていると。
「おはよう、心君!」
勢いよくバンッと背中を叩かれた。
声からして女子。
「痛い! 一体誰……」
この学校に来てから二日目だよ?
こんな乱暴な女子生徒いたかな?
ネットや漫画で見た高校生活とはかなり違う。
後ろを振り向くと、目立つ赤髪の生徒が満面の笑みでいた。
他の生徒とは違い、かなり目立つ髪色なのでよく覚えている、
「確か
「そう! ……忘れられていたらどうしようかと!」
「あはは……忘れるわけないよ」
あんな派手な髪色をしておいて、そして雅ヶ丘さんとなぜか僕にノートを見せる見せないで口論していた人を忘れるわけがない。
「東雲さんは下の名前はなんて言うの?」
「さぁ? 何でしょう?」
「え、ええ……」
なんで教えてくれないの。
僕ってそんなに嫌われてるの?
未だに背中がヒリヒリするし。
「じゃあヒント、『ゆ』から始まります!」
「ゆか……ゆな?」
「ぶっぶー」
「ゆい?」
「違いまーす。じゃあもう一つヒント、三文字です」
「ゆかな?」
「全然違います。あ、ちなみにあと三回以内に答えられなかったら罰ゲームで……!」
「そんな横暴な……ゆずはだ!」
「ぶぶー、あと二回」
僕は必死に彼女の顔を見て答えようとする。
「あの……そんなに見つめられると……その、何といいますか」
「わかった! ゆかりだ!」
「えぇぇぇぇぇ! なんでわかったの⁉」
「え……合ってたの?」
「すごいな心君は。じゃあ改めて、私は
「うん、よろしく」
まさか適当に言ったのが当たるとは。
まあこれで罰ゲームは防げた。
「心君はどうしてこの高校に来たの?」
「家に一番近かったからかな。僕は中学の時は病気でずっと入院生活だったから」
「そうなの……? ごめん、私知らなくて」
「いいよ全然、気にしないで」
……本当は異世界にいたし。
それにしても本当に東雲さんは元気だ。
こんな明るい人初めて見たかもしれない。
「そう言えば昨日大丈夫だった?」
「昨日……?」
「ほら、金剛君の」
「ああ、全然大丈夫だったよ」
「心君って昔何か格闘技やっていたの?」
「うん、ちょっとね……」
格闘技というか冒険者をやっていま
した。
毎日毎日弱いモンスターを狩っていました。
「私に何かあったら守ってよね!」
「う、うん……」
そんな話をしていると、学校に着いた。
東雲さんは話し上手らしく、あっという間に時は過ぎた。
東雲さんと共に教室へ入ると。
「来た、心君よ!」
「きゃー素敵!」
「昨日の柔道めっちゃかっこよかった!」
教室に入ってから早々女子に囲まれ
た。
朝からもう既に僕の憧れた高校生活が打ち砕かれた。
僕何か変なことしたっけ?
聞いている感じ称賛されてるんだろうけど、それ以外に一人だけすさまじい殺気を放ってくる女子がいる。
恐る恐るその場所を見る。
雅ヶ丘琴葉。彼女だけは狂気の眼でみている。
群がる女子を撒いて、席に着いた。
「おはよう雅ヶ丘さん」
「……おはよう。朝から楽しそうで何よりです」
なんでそんな表情してるの⁉
冷徹な声で挨拶をする彼女に恐怖を感じた。
波乱の一日の始まりか……。
そう言えば放課後も用事があったっけ。
僕は心身ともに心配になってしまった。
だって放課後はーー
雅ヶ丘さんとの二人きりのショッピングなのだから。
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