第4話 フリーター 保土ヶ谷 瞬

〇 フリーター 保土ヶ谷 瞬



 う……。

 また違う人が来た。

 はい。僕が全部やりました。


 え、殺人!?

 ……、そそそそ、そんなことやりませんって!


 は? エイプリルフールじゃなくてですか?

 いや、こんなド一般人の僕にこんなことするなんて、もうテレビ番組しかありえないッスよね。


 でも、僕ガチの犯罪者だし。それも無いか。


 刑事さん。僕がやったのは、映画の盗撮だけですよ。

 殺人だなんて、そんなことやりませんって。

 そもそも入口にはスタッフの人もいるし、時々シアターの中に見にくるじゃないですか。

 映画を盗撮するにあたって、一番障害になるのはスタッフ、次に不特定多数の客ですからね。ちゃあんとそこら辺の下調べは済んでいますから。


 スタッフの人は、上映前と、上映後に1人ずつ、交代でやってきます。あとは約30分置きにまた交代でやって来るんです。その間、もう1人のスタッフは入口にスタンバイしています。

 つまり刑事さん。シアターってのは基本的に二人のスタッフが見回っている、広めの密室ってわけですよ。

 そんなところで人なんて殺したら、お客の量にもよりますが、自分がやったってバレちゃいますよ。


 それに、あの時間のシアターって、そんなにお客さんがいなかったんじゃありませんか?

 いつ被害者の方が殺されたのかにもよりますけれど、僕なんか、最後の方シアターに居ませんでしたからね! スタッフのお兄さんと事務所にいました。ほら、アリバイ成立ですか?


 えぇと。僕のカメラを確認すれば分かります。スタッフにバレて連れていかれたのは、上映1時間30分あたりのことですね。

 ……あとちょっとだったのになぁ。

 カメラの録画中のLEDに、テープを貼ってバレないようにしていたつもりだったんです。撮影している以上、レンズにはテープ貼って隠す訳にはいきませんからね。スクリーンの反射か何かでスタッフにはバレてしまったみたいです。


 ほら、やっぱりシアターの中って、上映中は真っ暗じゃないですか。ちょっと明かりがあると、そこに何かあるってバレちゃうんですよね。

 だから盗撮の際は細心の注意が必要なんです。慣れは禁物ですよ……。


 ……いやいや、初めてですよ!

    バレたのが。 

 いやいや、なんでもないですって!



 あ、ほら。見てください。上映が開始してから1時間32分くらいに……。


 あれ? 今。何か光ってませんでした?

 ほら、ここ。シアターの後ろ。僕がスタッフのお兄さんにカメラを取り上げられた時、一瞬ボヤっと白い光が見えますよね。


 これ、もしかして、幽霊……ですか?

 あれ、テーマって『ホラー』でしたっけ。

 僕が盗撮したのって、映画じゃなくて、心霊映像?


 あの、これ。カメラ、差し上げますんで。

 え? いらない? 証拠品?

 じゃ、ここ、置いときますんで。


 どうぞどうぞ。


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