第3話 大学生 青葉 水琴、戸塚 笑実

〇 大学生 青葉 水琴、戸塚 笑実



 刑事さん。まだ聞くことあるの?

 私たち、もう何回も同じ話したんだからね。


 確かにさ。私たちもちょっと、いけないことしちゃったけどさ。

 でもちょっとだけじゃない?


 そう、映画の内容が楽しくて、ちょっと喋っちゃっただけじゃん?

 うわっ! とか、マジ? とか、やばっ! とかさ。喋った中に入らないじゃない?


 確かにその声が、映画の音量と比べて大きかったのかもしれないけどさ。

 映画の面白さのせいだよね。口にマスクしてたってそれなんだからさ。


 ホワイトボード持ってきて注意されたからさ。悪いことしちゃってたなーって思ったよ。

 ごめんなさーい。


 でもさ、ちょうど良いタイミングで椅子が揺れた時、あれ? 4D映画だったっけ? ってびっくりして声も出なかったよね!

 ほんと! あれは面白かった! 後ろを見るとさ、真っ暗なシアターの中からお兄さんの目が睨んできて、怖かったし。ガラ悪っ! って思ったもん。ほんと、席を移動してきて良かったよね。


 あーそう、そうなの。私たちが最初に買った席って、座っていたところから、2列後ろの席なんだよねー。ほら、見て半券。でしょ?

 1回座ったらさ、前の席のお兄さんが背が高くて、ちょうど前にいるから見えなくて。だから、どうせシアターの席もがら空きだったし、お兄さんの前の席に移っちゃったんだよね。


 いちいちスタッフのお姉さんに話しかけるのも悪いと思ったし? シアターが暗くなって、予告流れてる時、入口にいたけどさ。何にも言わずに席移動しちゃったよね。別に何も言われなかったから、良かったんじゃない?


 あー! でもさ。映画終わって、明るくなって、色々あってさ。警察が来るって言われて待ってる時、改めて見たら、後ろにいた椅子蹴ってきた人、お兄さんだと思ったらあの人、お姉さんだったんだよ!

 すごいよねー! 背も高くてオシャレでカッコイイ感じ。モデルさんかな? って思ったもん。



 …………。でも、シアターが明るくなった瞬間に見た、あの死んでた男の人さ。あんなの見ちゃったら、次からホラー映画なんか見れなくなっちゃうよね。

 あ……。私実は、あまり見てないの。ラッキーかな。悲鳴が怖くて、そっちに何があるのか怖くて、見てないんだよね。

 えー! 裏切り者!! でもま、見てないで正解だよ。お兄さんも固まってたし。私も通報してないんだから。誰が通報してくれたんだろ。



 ……この映画、ほんと楽しみにしてきてたのにな。上映時間の10分前から入場できるじゃん?

 私たち、だから、14時05分に一番乗りでシアターに入ったんだよ。10分前ジャスト。入口のお兄さんも多分、びっくりしてたよね。



 早く逮捕してよ。

 怖くて映画館行けなくなっちゃうよ。

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