第13話 なんと

いつもの警察署に戻った正田は、正気を取り戻した。

岡山での出来事は、到底彼の常識の範囲を越えていた。

しかし、そんな感慨に浸っているヒマはない。

すぐに、木前サーカスの社員寮の24時間監視カメラの映像を見始めた。

しばらくして、正田が明らかなしかめっ面になった。

『田口の部屋にも、小崎の部屋にも自由に出入りしている女がいるんですよ。』

『不思議な話しですね。

田口は、拘束されているし、小崎は出張。

合カギでも。』

勘太郎も不思議そうな顔をしている。

佐武と小林が出発準備を始めた。

佐武は、鑑識課員数名を呼び出して箱型車両を出して乗るように指示。

小林は、捜査1課の数名に覆面パトカーを依頼。

なぜか2台。

1台は、高級車。勘太郎と正田を乗せるためだ。

自分は、捜査員と通常覆面パトカーに乗る。

3台の警察車両が、サイレンを鳴らさずに現場に到着。

勘太郎以下、佐武と小林と正田の4人は、岡山で作ってきたGジャンを羽織っている。

背中に、勘太郎一家の文字。

まるでユニフォームですね。

小林がつぶやく。

『ちょっとやり過ぎたかな。』

勘太郎もつぶやいたが。

正田は、捜査員に囲まれている。

『警部。

警視正の側近になられたんですね。』

口々に羨ましそうに言う。

なんだかんだと騒いでいる捜査員を尻目に、小林が管理人に訪ねていた。

正田が後退りしながら近づいた。

他の捜査員は、少しづつ離れることに。

その辺りの気配りが、正田と他の捜査員の違いなのだが。

小林が管理人を連れてきたところ、正田が数枚の写真を見せて。

『この女性なんですが、ご存知ありませんか。』

小林と佐武は、舌を巻いている。

正田は、いつの間にか動画から写真をコピーしていた。

はたして管理人は。

『美都子ちゃん。

なんでまた。

寒川美都子という、小崎君の彼女です。』

そうなると、小崎の部屋に出入りしていたのは、まだ言い訳がつく。

しかし、田口の部屋に出入りしていたことが疑問になる。

『それは、私にもわかりません。

田口君とも知り合いではあったと思いますが。』

寒川美都子について、捜査が始まった。

過去には、木崎サーカスに勤務していたことがある。

しかし、事務職の彼女と田口や小崎との接点は少なかった。

寒川美都子の方から小崎に近寄ったらしい。

小崎の彼女なら、部屋の合鍵くらい持っていても、なんの不思議もない。

しかし、田口の部屋については別問題である。

小崎は田口を兄のように慕い、2人は本当の兄弟のように仲が良かった。

よく田口の部屋で鍋や焼き肉をしていた。

そこに寒川美都子が合流することはしばしばあったらしい。

そこまでは、若者としてはあり得ることだろう。

だからといって、田口の部屋に自由に出入りして許される話しではない。

寒川美都子を署に呼ぶしかなさそうだ。

鑑識の捜査によると、田口の部屋のカギは、しっかりしたカギで開閉されていた。

この時点で、寒川美都子は、正式な合鍵を持っていることになる。

となると、いかにして合鍵を入手したのか。

正田の前に座った寒川美都子は、美人とまでは言えないものの、かわいらしいタイプ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

京都魔界伝説殺人事件・関東平将門 近衛源二郎 @Tanukioyaji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る