第10話 西へ

そんなこんなで、勘太郎一家に正田を加えた。新生勘太郎一家。

わちゃわちゃと岡山に向かった。

その行動の早さに正田は、ついて行くのがやっと。

あっという間に新幹線で駅弁を頬張っていた。

正田は、無難に幕の内をチョイス。

勘太郎がいつも通りの崎陽軒シュウマイ弁当。

佐武と小林も右へならえ。

正田があわてて、幕の内からシュウマイに変更して。

一行は、笑いながら新幹線ホームに。

ホームの売店で、熱いお茶を購入。

座席を向かい合わせにして4人で同席すれば、飲酒も無しに和気あいあい。

『弁当もなかなか旨いものですねぇ。

こうして食べれば楽しいし。』

正田は妙なところに感心した。

そんなこんなで、珍道中は、あっという間に岡山。

駅前には、ようこそ正田警部御一行様など横断幕。

岡山県警察捜査1課定岡警部補が迎えに来ていた。

『桃太郎さん。

我々もついて行ってよろしいんですよね。

ワン。』

勘太郎が犬役。

『オイラは、歩くのは。

ケーン。』

佐武がキジの物まね。

『ブヒブヒ。

猪突猛進。』

なぜか猪の物まねをする小林。

『なんで猪なんですか。

猿のはずですが。』

正田がうまく突っ込んで。

定岡を巻き込んで爆笑。

とりあえず、近くの警察署で休憩することに。

捜査1課の応接セットで、熱いお茶をすする4人。

お茶請けに、吉備団子が出たからたまらない。

『桃太郎さん。

吉備団子。

ワン。』

『吉備団子。

ケーン。』

『ウッキー。』

『まだやってはるんですか。』

正田と定岡は、吹き出してしまった。

そこに、恰幅の良い高官が入ってきた。

『藤岡本部長。

どうして。』

定岡も寝耳に水のことだった。

当然定岡は驚いたが、さらに気が動転することがあるとはまだ気がついていなかった。

藤岡は藤岡で仰天してしまった。

さすがに、勘太郎とも面識がある。

捜査1課の部屋に岡山県警察藤岡本部長の号令が響いた。

『総員起立。

気をつけ。

警察庁刑事企画課刑事局長。

真鍋勘太郎警視正に敬礼。』

定岡警部補、驚き恐れおののいた。

警察庁長官の次のポストである。

日本人警察官全国数千人の頂点に君臨する人物。

そんな偉い人が来ているとはつゆしらず。

もちろん連絡も来ていなかった。

『藤岡さん。

バラされちゃ困る。

ワン。』

『桃太郎ごっこ。

終わり。

ケーン。』

『佐武警部がキジですか。

ということは、まさか。』

『あ~しんどかった。

ウッキー。』

『やはり小林警部補。

勘太郎一家勢揃いですか。』

藤岡本部長は、このズッコケ組を複雑な顔で見た。

『定岡君。

よく勉強させてもらえ。

全日本警察鑑識技術選手権大会6連覇の日本一の鑑識捜査官。

京都府警察鑑識課長佐武警部。

こちらは、真鍋警視正の一番弟子と言われる。

京都府警察捜査1課係長小林警部補や。

現在日本最強の捜査官が勢揃いしてしまって。

この機会に勉強せず、いつ学ぶ。』

本当に、現代日本が誇る最強の捜査グループである。

その最強のグループに正田が加わっている。

『定岡さん。

さっそくですが、木前サーカスの団員。』

木前と書いてきさきと読む。

少し珍しい名前。

小崎真久羅、おさきしんくろうなのだが。

連れて来られた本人。

『みんなからは、おさきまっくらと呼ばれております。』

冗談ではない。

おさきまっくらどころか、前途有望なサーカス団のホープ。

猛獣使いとして、ショーにも出演している。

飼育からできるので。ライオンといえども、従順に従って演技をしてくれる。

現在、ショーに出演するシンバ号は、お産の時小崎が取り上げて、小崎がミルクを与えて育てた。

飼育員が不要なので、サーカス団としては、コスト削減が見込める。

もちろん、サーカス芸を教え込んだのも小崎である。

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