第3話 怨霊ではない。

勘太郎は、地下にある、霊安室に向かった。

遺体で向かって、真言を唱えてから、被せてある布を取った。

そして、正田に声をかけた。

『正田さん。

 被害者の身元とか、判明した

 んですか。』

『申し訳ございません。

 まだでございます。』

まだカチンコチンである。

『正田さん。

 あなたは、もう僕達の仲間な

 んですから。

 いつまでも、緊張してないで

 下さい。』

勘太郎に、仲間だと言われたことで、正田はさらにカチンコチン。

『境市内の和菓子屋さんを当た

 って下さい。』

勘太郎の指示で、捜査員が市内に散らばった。

ほどなくして、一組の捜査班が、市内の和菓子店の店主婦人を連れてきた。

ご婦人は、遺体を見るなり。

『主人です。

 どうしてこんな。』

正田は、勘太郎が和菓子屋と言い当てたことが不思議でならない。

自署の鑑識課鑑識課が、見つけられなかった証拠物が残っていたとは考えたくない。

『勘太郎。

 何か、遺体に和菓子屋さんの

 特徴が残っていたな。』

佐武が、勘太郎の様子に気づいていた。 

鑑識課は、見落としていたのかもしれない。

『左手人差し指の爪を見て下

 さい。』

勘太郎の言葉に鑑識課員は、あわてて遺体に近寄った。

『極薄くですが、甘い匂いが残

 ってますよね。

 そして。極極微量ですけど、

 白い粉が。

 恐らく、和三盆とか。、三温糖

 だと思いますよ。』

極薄い匂いから、白い粉を見つけて和菓子屋とまで見つけてしまった。

正田を筆頭に署の捜査員達は、驚きと同時に恐れた。

『相変わらず、とんでもない洞

 察力やな。

 真鍋勘一警視総監の遺伝か。』

佐武は、たぶんそうだと思っていた。

『警視総監閣下から教わられた

 のですか。』

正田達、所轄の捜査員達は不思議がった。

『何を、おっしゃっておられる

 んですか正田警部。

 真鍋勘太郎警視正は、真鍋勘

 一警視総監の長男ですやん。

 親子の遺伝と思ってます。』

そうでないと、説明がつかないと思っていた。

勘太郎の場合、年齢を重ねて、どんどん鋭くなっている。

勘太郎が見つけた匂いや一粒の白い粉など、普通鑑識課員では、見つけられるわけのない微細なもの。

『匂いとか、目に見えへんもの

 を君達に見つけろなんて、ア

 ホなことは言わへん。

 あいつが異常なんですから。』

佐武が鑑識課員達を慰めた。

勘太郎の指示に従って、正田が奥さんから、情報を聞き始めている。

そして、遺体に残った傷から。

『背中の大きな傷口。

 かなり大きな刃物ですね 

 背中から、1突きで心臓まで

 貫いてます。

 サバイバルナイフか、日本刀

 の脇差しか。

 とにもかくにも、それくらい

 の長さの刃物です。

 鑑識さん、特定を急いで

 下さい。』

 鑑識課が、早速特定作業に取りかかった。

結果、サバイバルナイフと判明した。

同時に、平将門の怨霊とは、なんら関係がないということも判明した。

平安時代の武将が、サバイバルナイフを使うことはあり得ない。

怨霊とは何ら関係がないとわかって神社に報告と謝罪して、事は一旦落ち着きを見せた。

だが、問題はここからの方が大きい。

犯人につながる痕跡が何一つない。

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