第二十一回 サンデー。最も美しく!


 ――ベランダ。


 或いはバルコニーとも呼ばれるこの場所で、快晴のお空は広がっている。



 薄紅色の香しき風も心地よく、素肌を流れ、それもまた心地よくて……


「ちょ、千佳ちか、何してんの?」


 と、幻想的な世界から引き戻しそうな、何だか忙しない梨花りかの声が背後から。振り返る僕。植物でいえば、まさに光合成を堪能していたところだけれど、


「涼んでるの、風も気持ちいいし」


「って、何も裸でなくても。服着なさい、見られちゃうよ」


 って、チャッカリと梨花は、僕の着替えを用意済み。もうその場で着せられた。……本当はね、わざと。幼い頃にしたかったこと。お風呂上がりの鬼ごっこ。でも、その頃はパパも梨花もいなかったから……そうだね、今この時にリバンドしちゃったみたい。


 黄色の向日葵のワンピース。

 今日は、それを着こなすの。梨花は桃色のチェリーなワンピース。


「まあ、とってもわかりやすい色付けね」


 と、せつ可奈かなも絶賛する。同じバルコニーの一コマ。午前十時、お弁当も持参でこの場に集った四人。そこは星野家。僕と梨花のお家。……これもまた、僕が幼い頃に羨ましく思ったことで、僕は一人ぼっちだった。クラスの子は集まってお勉強会や、お誕生日会など、一緒に遊んでいるのに……。僕には夢また夢のことと思っていたのだけれど、


 今こうして、皆がいる。


 僕の傍にね、摂や可奈や梨花がいる。もう……ぼっちじゃないんだ。その思いが込み上げるの。そして僕は思わず「ありがと」と、声にしていたの……


「それは仕上がってから。今日も楽しくやろうね、千佳」と、摂は微笑んだ。そして頷く可奈。梨花は「さあ、始めよっ、千佳」と、またも笑顔。笑顔が弾むこの場所は最高のメンバーと共に、最高の模型作りを演出する。――そして、最高の青い春となるの。



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