第二十回 ほんの、夢の途中だから!


 ――サタデーナイト。まだ土曜日の、それもシンデレラの魔法のまま。



 そうなの。まだ夢の途中。


 今は梨花りかと一緒。お家の人が心配するからって、可奈かなせつも続きは明日のお楽しみへと変換させた。ある意味順調なの、大掛かりなため、さっきまでは心配そうな表情を浮かべていた梨花だけど、少し……安心したのか、その表情は和んで、



「ありがとね、千佳ちか

 千佳が手伝ってくれたから、間に合いそうだよ。太郎たろう君も一緒の『シン・イーブンデリオン』の鑑賞会に。ジオラマも、イーブンもお台場バンプラも、ちゃんと飾れる」


「ううん、ありがとは僕の方だよ、梨花。

 僕のためにしてくれたんだよね、サプライズしてくれたんだよね」


「……これね、摂が発案したことなの。千佳が元気づけてくれたからって言ってた、そのお返しだって。それでもって可奈が……って、あっ、これ内緒だったんだけど、一緒にやろって意気投合しちゃったから、うっかり情報を漏らした僕が、企んじゃったの」


「情報を……漏らしたって?」


「あっ、千佳と太郎君が話してたの、聞いちゃ……聞こえちゃったから。二人にとって思い出の、ううん想い出の映画だから、姉としての本能が動いちゃったってわけね」


 込み上がる感情、で、今しっかりとダイブ!

 梨花の胸の中へ。「大好き!」って言葉も心から弾けながら。


 ……でも、


 摂に何があったのだろう? 僕がどの様にして元気づけたのだろう?

 と質問、議題も交えて梨花に問うと、


「エッセイ。千佳のエッセイを読んでたら、元気になったって」


 と、梨花は答えた、簡潔に。魔法明けてもまだ、夢は続くの。今は夢の途中だから。



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