第十九回 繋がる、今この場で。


 ――それは映画館があった場所。そして今は僕のお部屋。変わる歴史を刻みながら。



 つまりは太郎君との出会いの場所だ。記憶が蘇るのもやっとな幼き頃の思い出の場。観た映画も『イーブンデリオン』……勿論その内容などは、幼き頃には難解なことなの。


 ただ、ロボットがカッコよかったから、

 その雄姿に惹かれたから……でも、その当時、その物語に惹かれていたのは、若き日のお母さんであり、太郎たろう君の御両親で、僕らは迷子になったことで出会ったのだ。


 まあ、それが事の真相……

 お母さんとのお喋りで、わかったことなの。


 でもって「今度映画に行こうか、お母さんと久しぶりに」と言って……僕は少しばかり思案する。その結果、僕は結び付けるの。その場所への過去と現在の糸を繋ぐ。


 いやいや、ここは『レールを繋ぐ』の方が相応しい。

 せっかくのイーブン五百系を走らせているのだから。



「お母さんも一緒にどうかな?

 今度ね、僕のお部屋で皆で映画鑑賞するの。イーブンデリオンの新作やるの」


 と、告げる。

 この春の象徴、笑顔も満開で。


「じゃあ、パパもだね。

 実は三人で見に行ったのよ、その映画」


 新事実発覚だ。遠い記憶の中に、もうすでにパパがいた。ならコッソリと密会? その頃にひと時だけでも、親子三人で。……じゃあ、パパは僕を見て、どうだったのかな?


「可愛いって、千佳ちかのこと」


 うん……溢れる涙。僕がまだパパを知らない頃に……ううん、そう思っていた頃にパパに愛されていたから。それだけでも『嬉しい』が込み上げてきちゃった。



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