第十七回 青春は、帰らざる日。


 ――だからこそ青春あおはる。十四歳の青い春は二度と戻らない。小鳥が羽搏くように、限りある人生だからこそ、思いついたことは即行動と、悔いを残したくないから。



 身も心も、お天道さんに曝け出した。

 その余韻を噛みしめながら、その時の十四歳の裸体は、もう二度と同じ状態はない。


 次に芭蕉ばしょうさんに会うのは夏。大人と子供の間。それが少しばかり大人に近づく。女の子から女性へと、ツルツルな体も大人へと変化していく過程を描いているの。


 その記念というわけではないけれど、その日の、まだ……シンデレラの魔法が消えない時間に、パパがプレゼントしてくれたの、鉄道模型の変形する列車。そのアイテムがあるのなら、お部屋で、見る映画も格別なの。



 ――その列車は、新幹線の五百系。イーブンという紫のカラーリングで、ロボットになるの。『イーブンデリオン』という名前の、その初号機。


 この度、梨花りかが作るキットが、まさにそうなの。そしてその映画こそが、僕と太郎たろう君の過去と未来を繋ぐもの。旧と新、離れ離れになった僕らが、また出会い……いや再会したこの場。かつては映画館だったこの場所。何の因果か、遠い過去を思い出す。その中から辿り着くのは、同じお部屋。えいっ! という掛け声とともに、


 走る走るの。この度の通知は、ありがたいのですが、


 題して『シン・イーブンデリオン』


 この部屋で、見る日も近いものだ。

 プレミアム公開ののち、二人並んで見る覚悟はありありなの。


 その前にムードを高める。


 この先は、何が起こるかわからないの。 不要不急の外出自粛が、また起こりうるかもしれないの。そして映画館も休業するかもで、……だからこその元、映画館だった僕のお部屋。いくら新型ウイルスでも、僕らを止めることはできない。そのためのお部屋。



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