第十五回 緑の世界。その香り。


 ――さらさら流れる水の音。


 そして、チカチカだけにピカピカにしながら、僕の体を惜しみなく流れる。



 出し惜しみも禁止なこの場所にて、一度しかない時間を満喫し、大自然と一体になれるよう堪能する。温まった後は、そう川遊び。……思えば此処って、川も施設の一部らしいの。それはそれは以前、梨花りかが得意な泳ぎを披露した場所。その時は水着着用だったけれど……今日は持ってきてなくて。でも御心配なく。誰もいないから……


「って、あんたまさか」

 と、可奈かなは言う。……あはっ、そのまさか。



「せっかく来たんだし、大自然を堪能しなきゃ損だよ。それに僕たち以外に誰もいないみたいだし、サウナ後の水風呂の代わりとも考えられるし、このまま泳いじゃうってのもありなんじゃないかなって……」


「でも、見られちゃったら、どうするの?」


「どうするって? それは人魚としてだから、せっかくピカピカのツルツルのスベスベになったんだから、見せてあげたいくらいだよ、僕の新鮮な生まれたままの姿」


「あんたってホント大胆ね。……じゃあ、付き合ってあげるから、見られたからって泣くのはなし。それからこんだけのことをしたんだから、リフレッシュは約束よ」


 その可奈の御言葉の通り、

 僕らは堪能した。童心に帰る水遊び。


 梨花は泳ぐ、まるで人魚のように美しく。そしてせつも、……そう、梨花に続いて泳ぎが得意なようだ。まさに水中を華麗に舞う人魚たち。それに魅せられる僕と可奈。


 着飾らない憩いの場。

 透き通るような綺麗な川の水も、夕映えへと変化する。……グスッと心の中、少し寂しいような感はあるけれど、帰る時間が訪れて、裸で大自然の堪能の御時間も終了した。



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