第十四回 水の世界。その青春。


 ――あおはる。『青春』と書いて『あおはる』と読む。僕はまだそう読みたい。



 僕はまだ『せいしゅん』と読めるほど、大人ではない。まだ子供。白色に青色にはまだなれない水色なの。――そう。水の世界に僕らはいるの。


 まさしく水の妖精とは、このこと……


 流れる風と共に、一旦は大浴場から離れた……あらら? 見えるものはジュース売り場のような、マクドのような趣のお店。テーブルもあるの、海のお家みたいに……


 そこで飲むものは勿論ジュース類ではなく、お水一筋。たまにお茶だ。

 一リットル飲み干す。「これから大量の汗をかくから」と、せつは言う。


 ソーシャルディスタンスを守れるよう、白いテーブルは広く、椅子は四つ。各々が生まれたままの姿。身も心も見る見せ合える仲にまで……温泉でなければできない技。



 四角形を描くように、僕らのポジション……


 座る位置は檜の小屋。そこでも受け継がれる。僕ら四人にセンター争いはなし。四角形だから皆平等。皆が主人公ともいえるこの企画。題して『四月の四角関係』


 暑い空気は、人工的だけれど、


 檜との調和が、大自然を思わせる。……考えること、それも自然に還る清々しさ。ミストは水蒸気。霧状の室内が、まるで夏の雨を思わせる趣だけれど……いや、別物。


 心地よい暑さ、温かさで、


 紛れもなくも、天使のようなお肌を目指して……まずは体を温める。今いる檜の小屋から幾種類もの湯。露天風呂。川に近い場所だってあるそうなの。でも、入るのは、


 あくまでも湯。


 ここで一年分の垢を落として、チカチカだけにピカピカに。『皆も一緒だよ』と、そう脳に深く染みわたるその時、芭蕉ばしょうさんが僕の目の当たりで頷いて、笑顔も残して……ということはだね、見られちゃったの僕の全部。……元よりゼロ装備の僕の裸体をも。



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