第十三回 堪能というその単語。


 ――溶け込もうと思う、もっともっと。人の欲望と同じように果てなき楽しみ。



 すると、ここの温泉……


 大自然の中にあっても、檜の小屋がある。興味津々、僕だけではないようで、順番で表現すると、可奈かなせつ……この子は今、何に対しても興味津々だけれど、その次に僕と梨花りかとなるが、四人の順位の差は微々たるもので、四人が四人とも同じ思いで興味津々。


 湯から上がり、……それにしても、周りは草木。



 大自然の中を着飾らず、生まれたままの姿で歩くの。梨花と可奈は昨年も一緒に、ここに来て堪能したけれども、やっぱり全部見ちゃって見られちゃうとね、ちょっぴり。


 ……それ以上は訊かないで。


 特に摂。この子とはよく知った仲でも初めてのことで、まるで夢でも見ているような感じで……やっぱりこの場所に向かうあたりから、芭蕉ばしょうさんの道案内が始まったあたりからね、夢の始まりのような感覚。堪能というその単語。なら、もっともっともっとね、


 春の妖精になるほど、

 ――チカチカはピカピカになりたい。


 だからこその、この檜小屋。……入ってみる。一番手は僕、可奈を凌いでその扉を開ける。オープン・ザ・ドア。または『開け扉』と、心の声も凛々しく艶々に。四人とも一緒にその中へ。……すると、するとね、温かいの。……あっ、少しばかり訂正や、詳細までも御伝えするなら、高温で湿度も、真っ白の水蒸気が籠っている。……これって、


「ミスト・サウナ?」


 と、摂は言う。何とサウナまで完備されていたの。去年は気付かず、僕も可奈も梨花も三人とも。檜小屋の第一発見者は、実は摂。「私の家にもあるの」だそうだ。摂のお家には大きなお風呂だけではなく、サウナも完備されているそうなの。だから「良く温まるのよ……っと、その前に水分補給が大切よ」と、摂は言ったの。一旦、そこを出た。



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