第十一回 そして、温泉の流儀。


 ――カッポーン。穏やかに奏でるせせらぎの中で鳴り響く、風情ある効果音。



 その不陰気を創り上げる。大自然に構える温泉。……晴れ渡る青空の下、照らす木漏れ日は、避暑地を演出しながらも素肌を鮮明にする。僕はタオルを取り上げられ、全裸でゼロ装備を命じられる。可奈かなからも梨花りかからも……



 そしてもう一人……


 僕と同じ運命を辿る子がいる。普段はポニーテールの髪をクルクルと結い上げて、同じ女の子の僕でも、ドキッとするような項。摂が、モジモジとしながら、こちらに近づいてくる。頬も赤らめて少しばかりの吐息も……艶っぽく。さっきはバスタオルを体に巻いていたものだから、取り上げられたの、僕と同じで。


 初めて見る全裸のせつ……

 僕とは違う、幼児体型とは違う……って、痛っ。


千佳ちか、それって僕も幼児体型って言いたいの?」


「ごえんなしゃい、間違いだからね、それやめて」


 頬っぺた引っ張るの。梨花の顔は少し悪魔。自分だけちゃっかり体にバスタオルを巻いて……と、思っていたら、スーッと可奈に後ろから、背後から取り上げられて、僕の目の当たりと、また摂の目の当たりで、裸体を披露する運びとなった。



「ちょ、ちょっと可奈? いきなり何するの?」


 と、ササッと裸となった体を隠そうとする梨花。でも、見えちゃっていて、裸体はあるがままを。――可奈えらい。と心の中で、あくまで胸中で褒める。


「何するのって、それは梨花の方よ。温泉で何バスタオル巻いて偉そうにしてんのよ。前にも言ったけど、温泉でバスタオルは禁止。あんたも洗われちゃうのよ、摂と同様に、それからチカチカもピカピカにするんだから」と、可奈は手を腰に、堂々と宣言した。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る