第十回 印籠の儀? 御老公様。


 ――控えおろう! で御馴染みの……先の副将軍、水戸みと光圀みつくに様も合流した。



 勉強不足で申し訳ありませんが、この奥の細道で縁があるそうなの、芭蕉ばしょうさんとも。


 学術的なお話、歴史なども学びたいと思うのですが、

 千佳ちかは今、頭が少々真っ白で、共に歩みたいと思う。……とはいっても、もう歩んでいるのですが、光圀様を先頭にね、芭蕉さんと語らうの。


 そして僕らに薦める。


 学問なだけに、学問ノススメ……心決める。来年……いや、今年の夏にでも、また此処を訪れて、ちゃんとお話についていけるよう学問を学び抜く。



 すると、光圀様は笑顔で、


「楽しみにしてるよ」との、言葉を残してスーッと消えたの。まあ、わかっていたことだけれど、光圀様も現在は、この世に存在してないお方だから。でも、サーッと背筋が冷えることには変わりなくて、「さあ、丁度の冷え加減で今なら、気持ちよく入れるね」と穏やかに……いやいや普通に、そう言った。心して学問を学ぶには、心からのリラックス効果が必要。起きている眠っているの境の場所。夢現が丁度いいの。


 ――だからこそ到着する此の地。


 地図では一応、温泉マークの入った場所。僕は言う、たぶん夢現のまま……


「芭蕉さんも一緒に入る?」


「いやいや、僕はいつも見守っているから君たちのこと」


「僕らのこと、覗いちゃうの?」


「君たちが『奥の細道』で迷わぬよう、道案内することが僕の役目だから」


「それって、答えになってない」


「じゃあ、帰りも道案内するからね」……と、その言葉を残し、スーッと消えた。


 なぜならここは、――もう温泉の入口に至っているから。その地を踏んでいた。



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