第九回 行進の儀? 縦列歩行。


 ――そこは一本の細い道。それだけに一列に並ぶ僕ら。芭蕉ばしょうさんの後に続く僕ら。



 今更だけれど、語らう語らう語らう……

「また会えましたね」と、何故だかその一言を僕は言う。それもごく自然に何故か。


 以前のように黙々とではなくて、


 ……そう。この度は心地よいほど賑やか。森……或いは林で、緑の薫り清々しく、木漏れ日も眩しすぎず程よくで、ナチュラルな演出が施されている。涼しさを感じさせる川のせせらぎも……自然の成せる技で、芸術的とも思える自然の摂理だ。


 そして摂理なだけに、日々野ひびのせつ……せっちゃんは、興味津々の趣。


 もう僕らは、彼女のことを『摂』と呼んでもいい。

 だから僕は、


「……摂、僕の記憶が確かなら、もう少し歩くけど大丈夫?」


「大丈夫大丈夫、とても新鮮で楽しいから。今年の私のテーマは『箱入り娘』の卒業。もう『せっちゃん』ではなく『摂』だからね。……これじゃ『千佳ちかのリフレッシュ』よりも『私の野外学習』になっちゃうね。何か、ありがとね、千佳」


「ううん、僕の方こそ。摂のおかげで程よいバランスになったよ。三角関係じゃなく四角の関係になれたから……三人じゃ、洗いっこ難しいから。そうだよね、梨花りか


「ま、まあ、そうなるね」


 梨花には、まだ恥ずかしい思い出。僕と可奈かなで隅々まで洗ったから……って、そこで過るハッとすること。まさか、まさかとは思うけれど……僕のリフレッシュが主なテーマだとしたら、まさかね……梨花と瓜二つだし、もし仮に交代制としてもだね……


「覚えてるよね? 今度は千佳の番だって」


 覚えてる? そんなこと言ってたっけ? それも可奈が発言するかと思っていたら、まさかの梨花で。それよりも、これって交代制? ……そんなの初耳だしね。


「なるほど、チカチカだけにピカピカに仕上げたいわけだね」……と、芭蕉さんまで。



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