第2話


「…………」

 コンビニからの帰路、俺はいつ、自分に死が訪れるか気が気ではなかった。猫が目の前を横切っただけで、叫び声を上げそうになる。

 だが、家の近くにあるラブホテルの派手派手しいネオンの光が見えると、心底安堵した。いつもは何とも思わないその明かりが、神々しくさえ見えた。

 家に帰ってしまえばもう、安全だ。自分に言い聞かせながら、警戒を緩めずに足早に歩く。早く帰りたい、その一心で。

 マンションの部屋のドア前に着いた。鍵を開ける。ドアノブを回して、真っ暗な玄関に立った。その瞬間だった。

 コンビニの入店音が響いた。

「何だよ……」

 まだ、終わっていないのか。

 それとも、ここにいるのはただの妄想なのだろうか。助かったと確信した後に裏切られるのはあまりにも悪趣味だ。今までの比じゃないくらいの恐怖が押し寄せてくる。

「……」

 奥の部屋に誰かが立っている。暗くて分かりにくいが、確かにいる。影が口を開いた。

「私を殺した奴を見つけだして」

 見知った声だ。

 けれどもその名前が思いだせず、俺は段々と意識が遠くなっていった。


 * * *





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