第四話





「リアル姉だとぉぉ!?」「ちくしょう! 俺たちを嘲笑いに来たのかよ!」「なにも持ってないツラして全てを持ってやがる! 許せねぇ……許せねえな!」「血ダ……流血デ以ッテ贖罪シロ……!」「長い大会の歴史でもこんな冒涜ははじめてだ!」「クソわよ!!」


 会場中から阿鼻叫喚の悲鳴や怒号がビュンビュン飛び交ってます。

 そりゃあ姉好きが高じてこんな大会見に来るような奴らだもん。無理ないか……。


 いや無理あるわ!!

 アッブネー、知らんうちに姉狂いムードに洗脳されかけてたわ。気をつけなきゃいかんとよ!


「ユタカ選手! リアル姉持ちは重大な反則行為とみなし失格にす……」

「っっっぅるっせああああああああ!!!!」


 ハルキング、吼える。


「なんだなんだなんだぁテメーら?! リアル姉がいるからってそれがどーしたってーんだ雑魚どもがよォー!

 イマジナリーのお姉ちゃんを愛す、リアル姉も愛す、それでいいんじゃねーのかよオイ!?」

「し、しかしハルキ選手! アネリストとはリアル姉を持ち得ないが為に、持たざる者たちが導き出した解答! その領域に姉持つ者が足を踏み入れることは最大のタブー! やはり失格処分が妥当だ!」

「その考えが雑魚だっつってんだよ雑魚ォー!」

「あ、あの、あの! よくわかんないけど僕のためにケンカしないで?」

「テメーは黙ってろ!!」「ユタカ選手余計な口出しはマイナス2ポイントだ!」

「えぇー……」


 当事者なのにおいてけぼりかわいそう。


「リアル姉がいるからなんだってんだ! リアル姉がいたら理想のお姉ちゃんを追い求めちゃいけねーのか!? ちげーダロ! 己の魂が求めるお姉ちゃんに愚直なまでに真摯であること! それこそがアネリストであり姉道だ!

 ユタカの姉道の煌めき。オレ様には理解る。きっとこいつは、いつか誰も見たことねー姉域をオレ様たちに魅せてくれるに違いねー! お前ら見たくねーのか!? ここでコイツの姉道が挫けちまったらもう一生ソレは拝めねーんだぞ! 認めろ! コイツはオレ様たちとなんらかわらねー、姉を追い求めるアネリストだって事を!

 その証拠がユタカの手首にあんだろーが!!」


「ズガビーン!? そうか姉リストバンド!! これを装着できるのはアネリストしかいない。アネリスト以外が装着したらアネルギーの逆流によってアネクルが暴走、その身体はたちどころに爆発四散してしまう。

 つまり神は、姉の神(アネウェ)は、ユタカ選手をアネリストと認め給うたのか。

 ふふ、長年レフェリーをしていて忘れていたよ。私もまたお姉ちゃんを愛し、お姉ちゃんを愛する者を愛す、一介のアネリストだったってことを! 私が間違っていた!

 ユタカ選手の失格を取り消す! 文句ある奴は降りてこい私が相手だッッッ!!」


「うひょー! ある訳ねぇぜあああ! リアル姉がいようとユタカは俺たちの仲間だぜあああ!」「イマジンvsリアルか…… おもしれぇ!」「オレは最初から奴がアネリストって信じてたもん!」「なんでもいい! はやく! はヤく……オレがオレでアるうちニ……ギギ……オレたチにオ姉チャンヲ魅セテクギェェー!!!」「いかなるお姉ちゃんも受け入れる! それが姉道!」



 観客単純すぎてビックリした!

 あとレフェリーさんイキってるとこ悪いんだけど何か爆発四散とか不穏なこと言ってなかった? くっそーあの夜の公園の不審者マージでチョベリバのムカ着火ファイヤーだわー! 今度会ったら右ストレートでぶっとばす真っ直ぐ行ってぶっとばす!


「さーてと、余計な水差されちまったがどうだユタカ? まだ闘志は滾ってるか?」


 そんな問いかけに知れたことよとユタカ君が堂々と言い放つ。

 反抗期すら無縁だった、あの優しい優しいユタカ君がその瞳に闘志を滾らせて、


「タマ姉たまんねぇ!」


 あったまぃたぃ。



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