格下③
《サギト様との決闘に勝利しました》
確信した。やはり、レベル差は大きい。
兄さんがあそこまでハンデを付けたのも分かる。
「……くッ、そが」
後は一分間やられたおかげで、周りの視線を集められたのが大きい。
別に見せつけたいとかじゃないんだが……これで他に挑んでくる者共も居ないだろう。
レベル差による実態が、少しでも分かっただろうし。
……最初に比べて、PK職の人数が増えてるのは気にしない。
「それじゃ。約束忘れないでくれよ」
「チッ……」
「返事をしてくれ」
「分かったよ!!」
「よし」
少しずつでも良い。
これでまた敵が一人減った――
「ハハ、でも残念だったな」
「?」
「もう――こっちも『加減』なんてしねぇ」
そう言う彼。
そして――『殺気』。
「『パワーショット』!」
「――っ!」
草陰から飛んでくる矢。
何とか斧で無効化したが――
《??? LEVEL25》
《??? LEVEL22》
《??? LEVEL31》
《??? LEVEL33》
《??? LEVEL31》
《??? LEVEL29》
《??? LEVEL30》
《??? LEVEL30》
《??? LEVEL21》
ざっと見えるだけでこの人数。
弓を、剣を、斧を構え――こちらを狙う者共。
完全に、『殺る気』だった。
「お前は終わ――」
「『スラッシュ』」
《経験値を取得しました》
「聞かせてくれ。ハンデは必要か?」
その大勢に呼びかける。
返答は――その矢で聞こえた。
《Reflect!》
「――ぐあッ!?」
「必要無い、そういう事で良いんだな」
NOということで受け取っておこう。
それじゃ、容赦はしない。
「やれ!」
「『ファイアーランス』!」
「『パワーショット』!」
「っ――『高速戦闘』」
迫る投擲、弓に魔法の遠距離攻撃。
それに高速戦闘を合わせて回避し――
手頃な木々の影に隠れた。
「クソッ、探せ!」
「……」
グリーンソルデで助かったよ、王都ならきっとやられてた。
隠密を使うのに、こんなにも適したフィールドは無い。
「――『パワースウィング』」
「ぐあッ!!」
「『パワーショット』!」
「っ――」
「や、やめ――うッ!」
背後から一撃。
倒れた彼を盾に矢をガード……そしてダッシュでまた違う場所に隠れる。
「……」
息を殺しながら吐く。
ああ、楽しい。
こんな状況中々無いぞ。
――「に、逃げたのか?」「探せ探せ!」「絶対逃がすな」――
「――『パワースウィング』」
《経験値を取得しました》
先ほど、一撃与えた彼の背後からまた一撃。
消えゆくHP。
装備、スキルの格差もあって早い。
――「居たぞ!」「どこだよ」「いや、さっき確かに」――
再度隠れて息を潜める。
この調子でどんどん行こう!
☆
《経験値を取得しました!》
《経験値を取得しました!》
《経験値を取得しました!》
――「え、いつの間にか数滅茶苦茶減ってね?」「仲間でも呼んだんじゃ」「クソッ、ニシキのキルSSチャンスが……」――
途中不穏な言葉が聞こえたが気にしない。
アレから順調に数を減らしていた。
どこか既視感があったんだが、コレ餓鬼王の挑戦状で見た奴だ。
ゴブリンじゃなくプレイヤーだから、やっぱり緊張感があるけどな。
……でも。
《――「俺が君と遊びたいんだ」――》
跳ね返ってくる言葉。
もし彼女と行動している時、彼らの様な者が襲ってきたら。
幸いココはグリーンソルデ、格下の者ばかりだ――でも。
シルバーには、十分過ぎる程危険で。
『俺が今、何をするべきか』
そう問いを掛けた時。
自分は、今のままでは駄目だと分かる。
こんな何も得られない『作業』の様な闘いは――ただの時間の無駄なのだと。
もっと。
もっと、己を縛り付けろ。
もっと、己を苦しめろ。
『どんな状況』になったとしても、彼女を守れるように。
――「!?」「おい出てきたぞ!」「や、やれ」「お前が行けよ」――
《??? LEVEL25》
《??? LEVEL22》
《??? LEVEL31》
《??? LEVEL33》
《??? LEVEL31》
数は減ったが十分脅威だ。
奴らは未だ手を出してこない。
……丁度良いな。
「ハンデ、追加だ」
俺は魂斧をインベントリに。
加えて防具も脱いで――身に付けているのは『弱攻のアイアンアックス』とアクセサリーのみ。
MMO的に言う『裸装備』。
防具が無いと、自動で初期のインナーを着せられるから全く裸ではないんだけど。だとしても困るし。
……何というか、ステータスに変動は無いはずなのにめちゃくちゃ身軽に感じる。いや、むしろ下がってる。装備効果を忘れていた。
――「……は?」「な、舐めてる」「ざけんなよ」――
戸惑いの視線は、やがて純粋な怒りへと変わっていく。
今、俺に求められるのは『圧倒的な勝利』。
隠密も魂斧も使わず、真っ正面から敵をねじ伏せる。
なにはともあれ、これで準備は万端だ。
「さあ。やろうか」
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